看護記録の書き方のキホン

看護記録の書き方の実例 経鼻胃管自己抜去事故

事例: 患者名 E氏 80歳 男性

 

疾患名: 脳梗塞

 

経過: 
一週間前、脳梗塞で入院。
右不全麻痺(MMT:徒手筋力テストで上下肢ともに3程度)。
運動性失語あり。
意識レベルJCS(ジャパン・コーマ・スケール)I-2.
経管栄養のため、胃管挿入中であったが、胃管チューブを左上肢で触る動作がたびたび見られていたので、安全のため左上肢にミトンを使用していた。

 

インシデント発生状況:
昼の食事のため、車椅子に乗車。
デイルームで経管栄養注入を開始する。
看護師は、となりのテーブルでS氏の食事介助を行いながら、E氏の注入の観察を行っていた。
看護師が、面会者に話しかけられ、数分間、目を放している間にE氏が身体を前屈させて胃管を自己抜去した。
看護師がすぐに発見した。

悪い記載例

〇月〇日
12:00 経管栄養中にMチューブを事故抜去される。

 

〇月〇日
12:05 VS著変なし。チアノーゼなし。
主治医へ報告。

 

〇月〇日
12:30 Mチューブを挿入する。

 

〇月〇日
12:40 右上肢にミトンを装着し、経管栄養を再開する。

修正が必要な場所

@ 事故発生前の患者さんの状態記録を記載します。
  (ミトンの使用状況や車椅子乗車していたことなど)

 

A Mチューブではなく、誰が読んでも分るような表現で記載します。

 

B どのようにして自己抜去したのか、発生時の状況についての記載をします。
  状況は、詳細に、目撃した事実のみを記載します。

 

C 誤嚥の可能性が考えられるので、呼吸状態の観察、バイタルの測定、観察をして記載します。

 

D 胃管を再挿入したときには、何cm挿入したのか、誰が挿入したのかを記載します。

 

E ミトンの装着時に、医師と合議した旨を記載します。

良い記載例

〇月〇日

 

11:50 デイルームで車椅子に乗車したまま経管栄養剤(ラコール)400mlの注入を開始する。
左上肢は、安全のため、ミトンを装着中。
 看護師〇〇

 

〇月〇日

 

12:00 ラコール150ml注入されたところで、身体を前屈させ、右上肢で胃管を自己抜去しているのを発見する。
むせなし。咳嗽なし。チアノーゼなし。
どうしたのか確認するが、首を左右に振るのみ。
 看護師〇〇

 

〇月〇日

 

12:05 BP142/86mmHg、P89回/分、R24回/分、R規則的。
喘鳴なし。両肺エア入り良好。酸素飽和度98%。
 看護師〇〇

 

〇月〇日
12:10 経管栄養中に、胃管を自己抜去されたことを主治医のB医師へ報告。
 看護師〇〇

 

〇月〇日
12:15 主治医のB医師が診察する。
呼吸状態の悪化は認めないので、経管栄養継続の指示あり。

 

〇月〇日
12:30 B医師が16Fr〇〇チューブを左鼻腔より55cm挿入する。
胃内吸引で、ラコール様注入物が吸引される。
胃上部でエア音を確認。
栄養を注入するチューブであり、注入中に抜いてしまうと誤嚥し、
窒息や肺炎を起こす可能性があるので抜かないように説明する。
E氏は、首を縦に振りうなずく。
B氏と合議した結果、失見当識があり、注入中の自己抜去のリスクがあるため、
右上肢もミトンを装着することとなる。
 看護師〇〇

 

〇月〇日
12:35 経管栄養剤(ラコール)の注入を再開する。
 看護師〇〇

 

〇月〇日
15:00 妻と長男が来院する。
B医師から胃管の自己抜去、右上肢のミトンについて説明あり。
妻は、「わかりました」とうなずき、了解される。
 看護師〇〇

記載上の注意点

事故が発生した場合は、発生状況が見える記録となるよう、
目撃した事実を詳細に記載することが必要です。

 

経鼻胃管抜去は、誤嚥による窒息や肺炎の危険性があります。
経時的に記載しておく必要があり、発生直後は呼吸の状態の変化がなくても時間が経過し症状が出現する事もあります。
継続して観察を行うことが必要で、その観察の記録をする事も必要です。

 

* ミトン装着時は医師との合議した旨を記載します。
生命や身体が危険にさらされる可能性が著しく高く、やむを得ず行動制限を実施する場合は、医師と看護師で患者さんの状態を評価し、合議した上で、実施の有無を確認します。
また、看護記録にもその合議の内容を記載する必要があります。

 

家族に対し、医師が説明をしたときの説明内容については記載しません。
看護師が説明した内容は看護師が記載しますが、
医師が説明した内容は、医師が記載します。
重要な説明内容であるため、表現の違いが発生すると問題が生じるからです。