看護記録の書き方のキホン

看護記録の書き方の実例 無断離院発生

事例: 患者名 A氏 72歳 女性

 

疾患名: 消化管穿孔、腹膜炎

 

家族構成: 夫と二人暮らし。近所に長男夫婦が住んでいる。

 

経過: 
数日前から「お腹が痛い」と、腹部をさすりながら家事をしていた。
〇月〇日、朝食の支度をしていたところ、「おなかが痛い」と腹部を押さえてかがみこんだまま動けなくなり、救急車で当院を受診。
X線撮影の結果、消化管穿孔と腹膜炎と診断され、緊急入院となる。

 

インシデント発生状況:
入院当日に緊急手術を施行する。
術後の回復は良好で、歩行ができるようになってからは廊下を徘徊し、
隣の部屋のベッドで寝ていることがあった。
検温やケアを実施している際、「家に帰りたい。」、「死にたい」という発現が聞かれている。
術後7日目にドレーンが抜け、歩行もスムーズになり、トイレも一人で行けるようになっていた。
安静度は、病棟内歩行可だったが、時々エレベーターホールまで歩いてしまい、
看護師にまだ病棟内だけ歩くよう説明を受けていた。
〇月〇日朝、看護師が食事を配膳するため病室を訪室すると不在だった。

悪い記載例

〇月〇日
7:30  食事を配膳するため訪室。
    不在。
    同室の患者からの情報で6時30分ごろ部屋を出て行ったっきり戻っていないとのこと!
    病棟を探すがいない。
    警備室に電話連絡し、患者を見かけていないか確認するが通っていないとのこと!
    自宅に連絡するが自宅に帰っておらずつかまらない。
    家族にもし帰ってたら連絡をほしいと話す。

 

    まだらボケになってきており、たまに死にたいといっていると家族から聞いていたため、早く対処する必要がある。

 

    夕方、長男から「自宅近くを歩いていたところを見つけた。」と連絡あり。
    これから病院に帰るとのこと。

 

19:30 家族に連れられて帰院。

修正が必要な場所

@ 何に対する経時記録科を明確にする必要があります。

 

A 無断離院発生前の記録をします。
  観察した事実のみを記載します。

 

B 数箇所に「!(エクスクラメーションマーク/ビックリマーク)」を記載していますが、看護記録に感嘆符などは使用しません。

 

C 看護長、主治医への報告の記載をします。
  看護長、医師の名前の記載もします。

 

D 「つかまる」という表現は、逃げる者を追う表現なので、看護記録には適切でないため使いません。

 

E 家族の誰に伝えたのか、本人との間柄などを明確にします。

 

F 探索している状況を分りやすく、記載します。
  感情や主観を記載せず、看護師の行動を分りやすく簡潔に記載します。

 

G 「まだらボケ」など、人格や知力を否定する意味を含む言葉は、看護記録には記載しません。

 

H 「早く対処する・・・」の対処とは、どのように対処するのか考えたことを具体的に記載し、
その後、速やかに対応したことを記載します。

 

I 「夕方」ではなく、時間を正確に記載します。

 

J 「家族に連れられて」の「連れられて」は、日本語が適切ではありません。

 

K 誰と帰院したのかを具体的に記載し、帰院時の患者さんの状態や言葉も記載します。

良い記載例

〇月〇日
4:00 廊下を歩いているため声をかけるが返答がなく、
そのまま自室へ戻る。
部屋に行くと自分のベッドで臥床されていた。
 看護師〇〇

 

5:00 入眠している。
 看護師〇〇

 

6:00 「どこも痛くない」と話される。
異常言動きかれず。
 看護師〇〇

 

7:30 食事を配膳するため訪室すると不在であった。
同室の患者にA氏が部屋にいた時間を聞くと
「6時半頃までは、ベッドに座って床頭台の引き出しを開けたりしていたと思う。」とのことであった。
看護師2人で病棟内とエレベーターホールを探すが不在。
 看護師〇〇

 

8:00 B管理看護長、当直医C医師にその旨を報告する。
 看護師〇〇

 

8:20 連絡先である夫と長男宅に連絡する。
夫より、「自宅には帰っていない。」と返答あり。
長男は通じなかったため、留守番電話で「至急連絡を下さい。」とメッセージを録音した。
 看護師〇〇

 

8:32 看護部緊急連絡網により各病棟の探索、警備員が院内及び敷地内、敷地近辺を探索したが発見できず。
 看護師〇〇

 

8:50 B管理看護長とD看護長、病棟看護師で病棟出口の監視モニターを見る。
    A氏が外へでたことが確認された。
 看護師〇〇

 

9:15 A氏の夫が来棟。看護長と主治医に連絡する。
 看護師〇〇

 

9:30 D看護長、C主治医、E上席医と夫が話し合い、希死念慮もあることから警察へ捜索願いを出すことになる。
 看護師〇〇

 

9:45 F警察官来院。
    G看護師が状況を説明する。
 看護師〇〇

 

11:00 夫は、A氏が立ち寄りそうな場所を探しながら自宅で待機するとのこと。
    携帯電話の番号を確認する。
 看護師〇〇

 

12:00 連絡なし。
 看護師〇〇

 

14:00 長男から病棟に電話があり、「A氏が自宅の近くを歩いているところを発見したと警察から連絡あった。」と報告を受ける。
    これから〇〇警察の警察官と夫、長男と病棟へ戻るとのこと。
 看護師〇〇

 

14:50 〇〇警察の警察官と夫と長男と4人で帰院する。
   「家に帰りたかった。」、「疲れた。」と話されている。
   BP130/80mmHg、T36.8℃、P88回/分
   腹部症状なし。
   D看護長、C主治医にその旨を報告する。
 看護師〇〇

記載上の注意点

無断離院発生時は、状況が刻々と変化していくので、
経時記録で記載することが必要です。

 

無断離院発生時の対応については、病院で統一した対応を取り決めています。
無断離院によってアクシデントが発生した場合、その内容に沿った対応ができているかがわかる記録が求められます。
そのため、詳細な記載をすることが必要です。