看護記録の書き方のキホン

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看護記録の書き方の実例 手術後の痛み

事例: 患者名 B氏 68歳 女性

 

疾患名: 直腸がん

 

家族構成: 夫・長男夫婦と同居 4人暮らし

 

経過:
一年前から排便に血液が付着するようになり、
便もすっきり出なくなったと自覚。
市販の下剤を内服したり水分を多めにとるなどしていたが症状は改善せず、
半年前の定期健診で貧血(Hb:8.0mg/dL)も指摘され外来を受診。
手術目的で外科病棟へ入院した。

 

インシデント発生状況:
直腸がんにて、低位前方切除術を施行する。
手術前から入院中の家事などを心配し、手術に対して不安も訴えていた。
手術は予定通り行われたが、創部痛を強く訴える。
手術後7日目より食事が開始されたが、個室のトイレ以外は動いていない。

悪い記載例

S: まだ痛くて動けません。

 

O: 昨日自室入口まで歩行。
点滴スタンドを押しながらデイルームまで歩行する。
離床を促すが消極的。
ベッドサイドの椅子に座り話を聞くと
「動くと傷が開かないか心配。動くと痛くて仕方ない。
先生も動かないといけないというけど痛くて動けない。
点滴もあるから動きにくい。」と話す。

 

A: 手術後7日目であるが離床進まず、消極的である。
本人に離床の必要性を説明し、離床を促していく。

 

P: 計画立案

修正が必要な場所

@ 現在のADLの状況を分るように書きます。

 

A 「消極的」とはどのような状態なのか、患者さんの動きや言動などを具体的に記述し、
誰が読んでも分るようにします。

 

B 患者さんの訴えは、言ったことをそのまま「S」情報に記載します。

 

C なぜ離床が進まないのか、アセスメントが不足しています。

 

D 「消極的」であると、看護師の主観で捉えたままでのアセスメントとなっています。

 

E 「計画立案」だけでは、今後どのようなケアを行っていくのかが分りません。
具体的な計画立案内容を記載します。

良い記載例

# 効果的な治療計画管理

 

S: 動くと傷が開かないか心配だし、動くとまだいたくてしかたがないです。
先生も動かさないといけないというけど、まだ痛くて動けませんよ。点滴もあるから動きにくいしね。

 

O: ベッド上で仰臥位になり、首だけ右に向けてテレビを見ている。
離床を促すために声をかけると上記発言あり。
動くことが創部へ悪影響を与えることはないこと、
離床の利点、起き上がり方法を説明すると、自ら起き上がり、点滴スタンドを押しながらデイルームまで歩行する。
歩行時は創部に手を添えながら、顔をしかめながら歩行する。
起き上がり時は、点滴ルートが引っ張られている。

 

A: 離床が重要であることは理解されているが、
痛みや創部に対する不安があり、離床が進まない状況である。
離床の重要性を再度説明し、創部が離開しないことを理解することで
安心して離床が進むように声かけしていく必要がある。
起き上がりやすい体位の取り方や手の添え方などについても説明し、
患者さんの苦痛を和らげながら離床できるように関わっていく。

 

P: 起き上がり方法などを説明し、離床が進めていけるように計画立案する。

 

 看護師〇〇

記載上の注意点

記録では、患者さんの表情や訴えた内容をそのまま記載します。

 

患者さんの表情や態度、言動から看護師が判断した内容の記載、
たとえば「消極的な態度である」や「〜気味」という記載は、
記載した看護師の主観が入っているので、看護記録として適切ではありません。
患者さんの状態を決め付けたり、曖昧な表現にしないようにし、
次に読む人にも状況が分るよう、客観的に記載します。

 

「消極的」、「積極的」、「協力的」などの情報は、
つい「O」情報として記載してしまいますが、
言動だけでは具体的な状態が伝わりません。
ですから、誰が読んでも患者さんの状況が分るように記載することが大切です。

 

目に見えない痛みの訴えは、疼痛スケールなどを使用すると分りやすくなります。
また、痛みについてはどのように、どのようなときに痛むのか
具体的に記述すると分りやすいです。