看護記録の書き方の実例 口頭での指示受け
事例: 患者名 H氏 98歳 男性
疾患名: 急性心不全
家族構成: 長男夫婦と同居
経過:
〇月〇日、5時30分ごろ、胸痛あり。
寝ている子供を起こし、「胸が痛い」と訴える。
その後、吐き気があって嘔吐一回あり。
改善せず、みるみる顔色も悪くなっていくため、119番に電話し、
救急車で当院に搬送される。
悪い記載例
<経時記録>
〇月〇日
22:00 モニターのアラームがなっているため、H氏のモニタを見ると、
期外収縮が時折あり、心房細動波形が見られた。
訪室し、H氏の症状を確認すると、「胸がドキドキしている、痛みはない」と訴えあり。
当直医にH氏の状態を報告し、ワソラン半筒の指示があり、B医師が実施した。
その後、モニタの波形はサイナス。
このまま様子を観察するよう指示を受ける。
修正が必要な場所
@ 「時折あり」など、あいまいな表現をせず、正確に記載するようにします。
A 心電図モニタの波形は、医師も確認していることがはっきり分る記録が必要ですから、
状況が見える記録をします。
患者さんへ説明した記録もします。
B 口頭での指示の場合、たとえば「半筒」を「サントウ」と思い込んで間違えるなどの可能性があります。
単位を記載します。
C モニタの波形に加え、客観的指標となるバイタルサインの記載も必要です。
D モニタだけではなく、観察した患者さんの状況についても記載します。
良い記載例
<経時記録>
〇月〇日
22:00 H氏のセントラルモニタのアラームが鳴っているため、
心電図波形を見ると一分間にPVC(心室期外収縮)が5回とAf(心房細動)がみられた。HR140/分。
症状を確認すると、「胸がどきどきしている、痛みはない。」と訴えあり。
BP160/90mmHg、P142/分、爪床チアノーゼあり、Af時の指示がないため、
当直医のB医師に電話で報告する。
救急外来の処置が終わってから診察するが、
ワソラン2.5mgを準備しておくよう口頭で指示を受ける。
口頭指示票に記載する。
H氏に先生は処置が終わり次第診察に来ることを説明し
「分りました」とのこと。
看護師〇〇
〇月〇日
22:08 B医師来棟し、モニタの波形確認。
H氏診察後、H氏に処置の内容を説明し、ワソラン2.5mgを静注する。
モニタの波形はサイナス、BP140/80mmHg、P92回/分。
「いま胸はどきどきしていない。」とのこと。
このまま様子観察するようB医師より口頭で指示を受ける。
夜間帯の異常波形が出たときの指示を、診療録(指示票)に記載してもらう。
H氏には動悸が合ったらナースコールを押すように説明した。
看護師〇〇
記載上の注意点
<口頭での指示を受けるときの対応>
原則として、口頭での指示は受けてはいけないことになっています。
ですが、緊急時などどうしても受けなくてはならないときがあります。
やむを得ない場合は、蚊ならず口頭指示確認用紙に記載し、
経時記録に指示を受けた内容を残します。
口頭指示確認用紙の様式の見本はこちら⇒口頭指示確認用紙
多くの病院では、口頭指示の確認方法が決まっています。
たとえば、口頭指示確認用紙は、指示簿への記載までは破棄しないという取り決めなどもあります。
医療安全マニュアルなどに記載してあることが多いので、
自部署のルールを確認しておくことが大切です。
口頭指示を安易に受けると、思い込みなどリスクが発生する可能性が高くなります。
<ある病院の医療安全マニュアルより>
■医師の指示出しの基本的スタイル
医師は、原則として「口頭指示」や「電話指示」を出さない。
ただし、緊急時などやむを得ない場合は、口頭指示確認用紙の内容を遵守した指示出しを行います。
■看護師の指示受けの基本的スタイル
@ 看護師は、指示は必ずメモを取り、口頭指示確認用紙に以下の項目を記入します。
(1) 患者氏名(フルネーム)
(2) 日付
(3) 時間
(4) 内容(薬物名、単位、量、速度)
(5) 投与方法(内服・舌下・坐薬・外用・注射など)
(6) 指示医師名
(7) 指示受け看護師名
A 上記記入した内容を読み上げ、医師に間違いのないことを確認します。
B 経過記録に口頭(電話)指示により、上記内容を実施したことを記載します。
C 口頭・電話指示は、速やかに指示した医師に指示簿への記載を依頼します。
D 指示簿への記載を確認した後に、口頭指示確認用紙を破棄します。