比較的緊急時に速やかな対応ができる病院や施設とは異なり、
在宅看護では緊急時に速やかに対処することが困難なことが多くあります。
ですから、だれにでも行うことができる応急手当の方法や、
緊急時の連絡先を家族や介護者に指導しておかなければなりません。
まず、患者さんや家族・介護者に対して
主治医から病態や予測される変化、応急手当などについて十分納得できるよう説明してもらうことが重要で、
その内容についても、看護師が把握しておくことが大切です。
緊急事態が起きた時、主治医や看護訪問ステーションに連絡するのか、
救急搬送し積極的な治療を希望するのかなどについても、
あらかじめ相談しておくことが必要です。
「24時間緊急時連絡体制」を実施している訪問看護ステーションがほとんどです。
いつでも相談や緊急訪問が出来る体制になっていて、
在宅看護の担い手として、在宅看護の継続に大きな役割を果たしています。
事故の場合
- 転倒や転落の場合
- 転倒や転落の事故が起きた場合は、
患者さんの全身状態や打撲部位の確認を行います。
骨折が疑われる時には病院受診を促すことが必要です。
また、頭部打撲の場合は、
数週間から数ヵ月後に慢性硬膜下血腫を発症する場合もあります。
ですから、意識レベルや認知状態の観察を継続して行うことが大切です。
認知症の患者さんや、せん妄がある患者さんでは、
身体機能以上の活動を行うことがあるので、注意が必要です。
ベッドから転倒したり転落したりした場合の打撲骨折などにならないよう、
患者さんの移動を考え、脱水、便秘、下痢などの不快症状を取り除き、
看護師側の想定を越える活動が減るようにするなど、事前の予防策とします。
転倒や転落事故防止には、
低床ベッドや転落事故防止マット等を使用することが有効です。
一人でも出歩いてしまう患者さんの場合には、
徘徊探知機の活用も考えることが必要です。 - 外傷の場合
- 外傷には、徘徊中の打撲による表皮剥離や擦過傷が多くあります。
外傷を負った場合は、傷の状態を観察し、
縫合の必要性がある場合や出血量が多い場合は清潔な布で傷部を多い、
医療機関の受診を促します。 - 熱傷の場合
- 在宅介護中に起きる熱傷は、湯たんぽや電気アンカによる低音熱傷が多くみられます。
自力で体位変換ができない患者さんは、
湯たんぽや電気アンカを体から10cm以上離すことや
アンカをバスタオルで包むなど、
家族や介護者に対して事前に指導することが必要です。
熱傷が広範囲に及んでいる場合や、
深い熱傷になっている場合は、医療機関への受診を促します。 - 誤飲
- 認知症の患者さんの場合、
食べ物を見せてはっきり「食べるもの」と判断できるかどうかを確認しなければなりません。
判断が困難な患者さんに対しては、
安全な生活環境を整えることが大切なので、家族や介護者に対する指導が大切です。
また、誤飲したものによって対処法が異なります。
身体に与える影響を与えた対処が必要となるため、
家族や介護者に対する指導を行います。
応急処置の判断、緊急搬送すべきかなど迷う場合は、
主治医に連絡をとるように伝えます。 - 薬物トラブル
- 認知症の患者さんや認知レベルが低下している患者さん、
精神疾患の患者さんなど、自己管理能力が低い患者さんに
薬物トラブルはおきやすい事故です。
服薬で問題になるのは、のみ忘れや記憶違いです。
内服薬の分包や一包化、服薬カレンダーを活用することなどによって、
定期的で確実な服薬が実践できるように援助します。
二重三重の内服、服薬中止が多い、降圧薬屋糖尿病薬の過量内服などは
意識障害を招くこともあります。
訪問看護で看護師が訪問した際、薬の残量を確認する事も重要です。
過量内服によって意識障害がある場合は、
主治医に連絡をし、医療機関へ搬送する事も必要になることがあります。 - 溺没
- 溺没は、高齢者の事故死の中で最も多い事故です。
高齢者が入浴する際は、入浴中に数回声をかけたり、
家族と一緒に入浴するなど、事故を防ぐための配慮が必要です。
もし、浴槽に没していた場合は、直ちに引き上げ救命処置を行います。
この時、浴槽内に水がたくさん入っていると本人を引き上げにくいので、
まずは排水します。 - 窒息
- 在宅における事故死として「窒息」も多くあります。
特に高齢者、小児には注意が必要です。
窒息しやすいものとしては、乾燥した食品や柑橘類の薄皮、ラーメンなどの麺類、
餅などがあります。
食べ物以外にも、硬化などを飲み込む事もあるので、
誤飲の危険性があるものを放置しないよう、家族や介護者に指導します。
異物を飲み込んでしまった場合は背部を強く叩き、
異物を吐き出させ、口の中の内容物は取り除きます。
嘔吐した場合は、吐物を誤嚥すると窒息する事もあるので、
患者さんの顔を横に向け、誤嚥しないような体勢にします。
痰が絡んだり咳き込んだりして、
気道粘膜の痰を吐き出すことができない場合も要注意です。
痰がつまることによる窒息が予測される時には、
家庭用の吸引機を用意し、家族や介護者に吸引の指導を行います。
咳き込まないようにするためには、
食事にトロミをつけるなど、患者さんに適した形態の食品の選択をする事も重要です。
症状が変化した場合
- 下痢の場合
- 在宅看護中の症状の変化に、下痢は多く見られる症状です。
水様便が続くと電解質バランスが悪くなるので、
早めに主治医と連絡をとり、日常から排便のコントロールをする必要があります。
下痢の場合は、消化管に負担が少ない食品や、食べ物の形態を選択することが大切で、
温めて与えるなどの指導も家族や介護者に行います。 - 便秘の場合
- 在宅看護において、便秘も多い症状です。
食物繊維の多い食品、乳酸菌を含む食品を進め、
水分の摂取制限がなければ一日の水分量は、1500~2000mlで調整します。
日常的に主治医と相談し、下剤を使用したり、浣腸や坐薬、摘便などの処置を行い、
定期的に排便できるよう導きます。 - 下血の場合
- 肛門周囲や排便の状況を常に注意し観察しておくことで、
下血をしているのか、痔出血であるのかの把握を簡単にすることが出来ます。
下血の場合、出血の量や性状、意識レベルなどを主治医に連絡することが必要です。 - 発熱の場合
- 嚥下性肺炎や尿路感染症による発熱が頻繁に起きる場合があります。
飲水や離床を心がけます。
発熱時は症状を観察し、水分補給をして必要であれば主治医へ連絡をします。 - 嘔吐
- 嘔吐も頻繁にある症状です。
特に高齢者で認知症の患者さんは、
前触れもなく突然嘔吐する場合も多くあります。
介護者が食事の内容や摂取量、排便のコントロールに注意し、
予防に努めます。
嘔吐した場合は、食事や飲水をやめて、
症状が治まってから負担のない食品を選び、温めてから食べさせるようにします。
嘔吐を頻繁に繰り返す時には、
脱水などの心配があるため、医療機関を受診してもらうよう促します。 - 吐血の場合
- 吐血した場合は、出血量や性状、顔色、意識状態を確認し、
食事や水分の摂取を中止し、医療機関を受診してもらいます。 - 意識消失
- 高血圧や心臓病、糖尿病、肝機能障害などから意識障害が起きること多々あります。
特に、高齢者で認知症の患者さんでは、睡眠と意識消失を見極めることが難しいため、
日常の生活パターンを把握し、正常かどうかの判断をします。
意識障害がどのように起きたのか、意識レベルはどのくらいか、
呼吸をしているかどうかなどを確認し、
重篤である場合は、救急車搬送が必要です。
すぐに意識が戻った場合も、かならず医療機関を受診してもらうように促します。
災害の場合
災害時に備え、患者さんや家族、
介護者に緊急時の対応を指示しておくことはとても重要です。
マニュアルを作成し、緊急連絡網、役割分担行動など災害時に備えるようにします。
災害時には、在宅患者の安否確認、情報の収集と整理、在宅訪問を迅速に実施できるように調整します。
急変の場合
訪問看護を利用している患者さんが急変した場合は、以下のように対応します。
- 家族より訪問看護ステーションに連絡がある。
- 臨時訪問する。
状態を確認士、看護師の処置のみで問題解決できれば対処する。
あらかじめ決めておいた主治医連絡先に電話連絡し、指示を受ける。
必要な処置を行う。
主治医や関係機関に報告する。
カルテへの記載・整理をする。 - 救命室へ搬送する。
入院の場合は必要な情報を病棟に伝える(訪問看護サマリー)。
関係機関に連絡する。
入院の必要がない場合は、再び訪問看護へ戻る。
- 徐々に悪化し、死が予測される場合
- 在宅で看取るか、入院をするか最終的な調整を行い方針を立てます。
状態を随時主治医に報告し、指示を受け、対処方法を打ち合わせます。
医師に往診を依頼し、医師による看取りや死亡確認についてのインフォームドコンセントをします。
訪問看護師の24時間連絡体制の確認を行い、訪問の頻度を増やします。
家族の気持ちの支えとなり、安楽で清潔な環境を整えます。
高齢者の9割は、家で家族に看取ってもらいたいという願いがあるそうです。
ですが、実際にその願いをかなえることができるのは3割に過ぎない現状があります。
願いが叶えられない原因として、急変時の不安などがあります。
高齢者の在宅での看取りを実現するために、訪問看護師の援助はとても重要です。

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