看護師不足の実情と潜在看護師の可能性
近年、医療業界において深刻な課題の一つとして「看護師不足」が挙げられています。この問題は高齢化の進行や医療需要の拡大によって、今後ますます深刻化することが予想されています。しかし、看護師不足と言われている現状において、必ずしも看護師の「数そのもの」が足りていないというわけではないのです。実際には、看護師免許を保有しているにもかかわらず、医療現場で働いていない「潜在看護師」の存在が大きなカギを握っています。
厚生労働省の統計によれば、日本には看護師免許を持っていながら現在医療現場に従事していない人、いわゆる潜在看護師が約70万人以上いると推定されています。つまり、制度的には「看護師資格者」は数多く存在しており、現場に戻ることができれば看護師不足の問題はある程度解消される可能性があるのです。
しかし、看護師としての現場復帰には多くの壁が存在しています。特に、看護師の多くが女性であるという点に注目すると、出産や育児といったライフイベントによって一度職を離れざるを得なかった人が少なくありません。家庭との両立が難しいことや、職場の理解が得られないといった理由で、復職をためらっている方も多いのが現状です。
とはいえ、子育てが一段落した段階で「やはりもう一度看護師として働きたい」「社会や人の役に立ちたい」と考えるママさん看護師も増えてきています。特に、看護師としての経験や知識を無駄にせず、再び現場で活躍したいという意欲を持った方は少なくありません。
復職への不安とその解消法
復職を考えた際、最大の不安要素として挙げられるのが「知識」と「技術」のブランクです。医療の現場は日々進化しており、医療技術や治療法、看護の在り方なども常に変化しています。たとえば、新薬の登場やガイドラインの更新、ICTを活用した電子カルテシステムの導入など、かつて現場にいた頃にはなかった機器や手法が一般化しているケースも多くあります。
また、感染症対策の考え方も、近年のパンデミックを経て大きく変わりました。マスクの扱い一つをとっても、数年前とは指導内容が異なることが多く、衛生管理に関する知識は常にアップデートが必要です。これらの変化に対応できるようにするためには、現場復帰前に基礎的な知識の見直しや学び直しが不可欠となります。
知識面については、テキストやeラーニングなどを活用し、自宅でも復習することが可能です。復職支援のための書籍や動画教材なども数多く用意されており、短時間でもコツコツ取り組むことで記憶を取り戻す助けになります。
一方で、技術面については、やはり実際に手を動かす「実習」が必要となる場面も多いです。注射や採血、点滴、バイタルサインの測定、褥瘡ケアといった基本的な看護技術は、復職支援セミナーなどで実際に体験しながら再習得するのが効果的です。特に、静脈注射や真空管採血、輸血などの手技は、患者さんの安全にも直結するため、精度と自信の両方が求められます。
「痛くない注射」は信頼に繋がる
看護師にとって、注射技術は避けて通れない重要なスキルの一つです。患者さんにとっても、注射という行為は不安や緊張を伴う場面であり、看護師の手技によってその印象が大きく左右されます。いくら笑顔で丁寧な対応をしていても、「あの看護師さんの注射は痛かった」と言われてしまえば、信頼を損なう可能性もあるでしょう。
そのためにも、復職前に注射の基礎を改めて復習することは非常に大切です。「なぜこの手技を行うのか」「どのように行えば患者の苦痛を軽減できるのか」「失敗したときの対処法は何か」など、一つひとつの技術を意味から理解し直すことで、単なるルーティンではなく、質の高い看護へと繋がります。
復職支援セミナーや研修を活用しよう
こうした不安を解消し、スムーズに職場復帰するためには、各地域で開催されている復職支援セミナーを活用するのが効果的です。セミナーでは、医療機関が主催する実技指導付きの研修や、自治体や看護協会が提供する座学中心の講座など、様々な形式が用意されています。中には託児サービス付きのセミナーもあり、子育て中のママさん看護師にとっても参加しやすい環境が整えられています。
また、復職後の就職先としては、夜勤がないクリニックやデイサービス、訪問看護など、家庭との両立がしやすい勤務形態を選ぶ方も増えています。フルタイムではなく、パートやアルバイトといった柔軟な働き方も可能です。
最後に
「もう一度看護師として働きたいけど、ブランクが不安で踏み出せない」――そんな方にこそ、ぜひ一歩を踏み出していただきたいと思います。看護師という仕事は、誰かの命や生活を支える、非常に意義のある職業です。そして、その知識や経験は、時間が空いても確実に蓄積されています。
今回ご紹介したような知識の見直しや技術の復習を通して、自信を持って現場に戻ることができます。少しでも多くの潜在看護師の方が再び医療の現場で活躍できるよう、支援体制は今後さらに整っていくでしょう。
あなたの再出発を、心から応援しています。
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