抗がん薬は、がん化学療法を行う患者さんにとってたくさんのメリットがありますが、
患者さん以外に抗がん剤が曝露されることがるので注意をしなければなりません。
医師や看護師はもちろん、アメリカのがん看護協会では、
抗がん剤投与48時間以内の排泄物にも抗がん剤が混ざっているものとして
取り扱い法が定められていたりします。
看護師は、ガン治療のために限られた期間のみ抗がん剤を使用する患者さんよりも、
長期間にわたって抗がん剤の曝露を受ける潜在的なリスクがあります。
医療従事者として十分な知識をもつことが必要で、
取り扱いには尊守しなければなりません。
そして、医療従事者だけでなく、患者さんの家族へも
曝露の予防知識を持ってもらう必要があるとされることもあります。
抗がん薬の毒性や取り扱い基準、曝露の経過や抗がん剤が起こす状況など、
抗がん薬に関する十分な知識をもつことはとても大切です。
抗がん薬の細胞毒性として注意すべきことは、
- 遺伝子に変質を引き起こす性質(変性原性)
- 先天異常や新生児に発現し、進行する構造異常を引き起こす性質(再奇形性)
- がんを発生させる性質(発ガン性)
です。
1990年ごろから、アメリカを中心に、抗がん薬の曝露による職業的な健康障害潜在リスクに注目が集まり、
特別な扱いが必要だと叫ばれていましたが、
曝露の存在をモニタするための信頼できる方法がないため、
未だに不明確な部分が多い現状があります。
ですが、曝露のリスクがある以上、慎重に取り扱いをすることが大切です。
抗がん薬のベッドサイドでの取り扱い
がん化学療法を受ける患者さんのケアをする看護師は、
「抗がん薬の毒性と取り扱い基準」・「曝露の経路や曝露を起こす主な状況」について、
正確な知識を持ち理解することが重要です。
細胞毒性のリスクに準じて抗がん薬の曝露の経過や状況を意識して取り扱うことで、
抗がん薬を必要以上に怖がる必要がなくなります。
そして、抗がん薬の曝露を予防するためには
「取り扱いに注意する場面」を把握しながら、
細胞毒性をもつ抗がん薬をベッドサイドで取り扱うことが大切です。
抗がん薬を取り扱う時には、1人ひとりの看護師が基準に適合した器材を使用します。
そのようにすることで、曝露の経路を遮断することができますし、
曝露時の処置にも対処できます。
抗がん薬がこぼれてしまう事も日常の臨床現場では起こりうることですが、
その場合の対応なども理解してから患者さんのケアにあたることで
曝露のリスクを回避することができ、曝露の拡大を防ぐことが出来ます。
看護師が、抗がん薬の曝露を怖がると、患者さんにも恐怖心を与えてしまうことになります。
ですから、看護師自信の曝露を予防することは重要なのですが、
抗がん薬をベッドサイドで扱う時には、取り扱う際のマニュアルを整備し、
組織化して取り組むことが大切です。
抗がん薬の毒性と取り扱い基準
取り扱い注意度A(毒薬指定薬剤): 細胞毒性が強くその取り扱いに十分な注意が必要な抗がん薬。
アントラサイクリン系、ACT-D、MMC、MTX、CPA、5-FU、IFMなど
取り扱い注意度B(一般的抗がん薬): 細胞毒性があり、その取り扱いに必要な抗がん薬。
一部のホルモン系抗がん薬。一部の分子標的治療薬など。
取り扱い注意度C(大部分のホルモン系抗がん薬): 細胞毒性に注意が必要な抗がん薬。
大分部の分子標的治療薬など。
<曝露の経路や曝露を起こす主な状況>
曝露の経路・吸収: 抗がん薬をこぼしたり、点滴交換時のしぶきなどが付着するなど
接触によって皮膚や粘膜から吸収することがあります。
曝露の経路・注入: 調剤時や医療廃棄物処理時に、針や鋭利な汚染物が刺さるなど、
穿刺部位から注入することがあります。
曝露の経路・吸入: アンプルカットやバイアルから注射針を抜く時に、
気化した抗がん薬を吸入してしまうなど、霧状の薬剤や埃、飛沫を吸入してしまうことがあります。
曝露の経路・経口摂取: 汚染した手を介して食べ物や飲み物を経口摂取してしまうことがあります。
タバコや、食事などの前には手の洗浄が必要です。
取り扱いに注意する場面
- バイアルから針を抜いたり刺したりする時。
- 針や注射器を使用して薬剤を移動させる時。
- アンプルを開く時。
- 毒薬の入っている注射器から空気を排出する時。
- 薬剤を投与する時。
- IVバッグに針を突き刺したり、IVチューブを交換する時。
- チューブや注射器、接続部からの薬液が漏れてしまった時の対処の時。
- 薬物や汚染した物品の廃棄作業をする時。
- 48時間以内に治療を受けた患者さんの嘔吐物や血液、排泄物などを取り扱う時。
- 薬剤による汚染部位を清掃する時。
抗がん薬をベッドサイドで扱う際の使用器材の基準
- パウダーフリーのディスポーザブルの手袋(ニトリル製)を使用
- 手袋は二重にして使用します。
使用前に、手袋の破綻がないかどうかを確認し、着用してから30分ごとに交換します。
手袋を外した後は必ず流水で洗い流し、さらに石けんを使用して洗います。 - 微粒子フィルタつきのマスク(N95)を使用
- フェイス・シールドが付いているものを望ましいとされています。
もしくは、ゴーグルやめがねなどを工夫して使用します。 - ガウンを着用
- 長袖で袖口が締まっているポリウレタンコートの低浸透性のディスポーザブルを着用します。
抗がん薬をベッドサイドで扱う際の曝露時の処置
- 皮膚についた場合
- 抗がん薬が皮膚や手指などに付着してしまった場合は、直ちに流水で洗い流し、さらに石けんで洗います。
- 眼に入った場合
- 抗がん薬が眼に入ってしまった場合には、直ちに流水や生理食塩液で洗眼し、
痛みや流涙、結膜炎症状などが残る場合は眼科を受診してください。
抗がん薬をベッドサイドで扱う際の針刺しをした場合の処置
抗がん薬を取り扱う際に、注射針などで皮膚などを刺してしまった場合は、
注射器内に抗がん薬が入っておらず、体内に抗がん薬が入っていない場合は局所消毒、
抗がん薬が入っている注射器などで針を刺してしまったり、体内に抗がん薬が入ってしまった場合には、
血管外漏出の場合と同じ対応をします。
抗がん薬をベッドサイドで扱う際の薬がこぼれてしまった時の対応
抗がん薬がこぼれてしまった時には、手袋とマスクを着用し、
ペーパータオルなどで周囲から汚染の中心に向かってふき取り、
ふき取りに使用したものは厚手のゴミ袋に入れて袋の口を閉じ、
耐貫通性の容器にいれて廃棄します。
アルコール綿は使用せず、医療用廃棄物として取り扱います。
床や机、医療器具、トイレなどはふき取りをした後、
薄めた洗剤液を少量つけ拭きき洗いをします。
最後にもう一度、乾いたものでふき取ります。
輸液ポンプやシリンジポンプなどの医療器具は、
薬剤をふき取り、硬く絞った布で再度ふき取ります。
抗がん薬を投与している患者さんの排泄物の取り扱い
患者さんの血液や嘔吐物、尿・便などの排泄物、汗を取り扱う時には手袋とマスクを着用します。
患者さんのリネンを取り扱う時には、手袋とマスクを着用します。
24時間蓄尿は、なるべくやめます。
24時間蓄尿が本当に必要な患者さんなのかどうかをチームでアセスメントし、
患者さんにとって本当に必要であると判断されれば、閉鎖式で蓄尿します。
尿器を使用するときにはふたつきのものを使用します。
トイレは2回流し、流れたことを確認します。
患者さんがオムツ類を使用する場合は、オムツはビニール袋に入れて密閉できる容器に捨てます。
(院内では、医療廃棄物として取り扱います)。
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