便秘や下痢を訴える患者さんに対しては、まず、症状が起きている原因を確認します。
・がん化学療法を受けている。
・腸管に腫瘍がある。
・開腹手術をしている。
・骨髄移植をしている。
・腹部への放射線照射を受けている。
・消化管を切除している。
・麻薬性鎮痛薬、抗生物質、抗うつ薬、制吐薬などが投与されている。
・便秘・下痢の既往がある。
このようなことが、症状の原因となります。
患者さんの排泄習慣や食事の摂取状況、生活環境を把握
健康な人でも、便秘や下痢は起こります。
患者さんに出現している便秘や下痢の症状が、がん疾患や治療の影響によるものかを、
今までの患者さんの食生活、運動量などの生活習慣や排泄習慣、既往歴を聞きながら鑑別することが必要です。
乳糖不耐性(乳製品アレルギー)や過敏性大腸炎などの炎症性腸疾患の既往は、
下痢症状を引き起こす原因になります。
食生活では、食事の量、バランス、水分摂取量が十分かどうかを評価し、
生活リズムの変化やストレスなどが排泄習慣に影響していることがあります。
決まった時間に排便があるか、ゆっくり排便できているか、不安をかかえていないかなど、
環境要因や心理要因についても併せてみていきます。
投与・服用している薬剤を確認
患者さんが服用している薬剤に、
便秘や下痢のリスクがあるものがないかどうかを確認します。
便秘症状が出現しやすい抗がん剤には、オンコビン(ピンクリスチン硫酸塩)など、
下痢症状が出現しやすい抗がん剤には、イリノテカン塩酸塩水和物などがあります。
また、抗がん剤以外の薬剤でも便秘や下痢が起こります。
例えば、オピオイドの常用では慢性的な便秘が起こり、
抗コリン系の抗うつ薬で蠕動運動の抑制が起きるので便秘になりやすくなります。
さらに咳止めのリン酸コデインでも便秘になることがあります。
抗生物質の投与時は、腸管内の常在菌が減退するので、
消化吸収機能が低下し、下痢になります。
フィジカルアセスメント
聴診で腸の動き、金属音や流水様の音など独特の腸音の有無を観察し、
腹壁の緊張や腹水の有無、圧痛、皮膚状態、発熱などの身体所見なども確認します。
下痢の症状は重篤化すると脱水症状によって意識障害が生じます。
皮膚状態や口渇感、脈拍回数、表情などから
脱水や電解質異常の徴候が出現していないか確認が必要です。
便秘
便秘の原因となるものには、抗がん剤、抗生物質、麻薬性鎮痛薬、
抗うつ薬、制吐薬など薬剤の作用による腸の蠕動運動の抑制、
腹水や腫瘍による通過障害、開腹手術による腸管の狭窄といった器質的な原因や、
過度の安静や生活習慣などがあります。
・抗がん剤による便秘
抗がん剤による便秘の出現時期は、薬剤の投与後数日から数ヶ月内と幅がありますが、
殆どは一過性のもので、併用薬や投与サイクルとも関連します。
・麻薬鎮痛薬による便秘
麻薬鎮痛薬を常用している場合の便秘は、慢性になる傾向があります。
・便秘が出現しやすい抗がん剤の例
微小管阻害薬 : ピンクリスチン硫酸塩、ピンプラスチン硫酸塩、ピンデシン硫酸塩、
ピノレルビン酒石酸塩、パクリタキセル、ドセタキセル水和物
下痢
下痢になると、便中の水分が80%以上の泥状便、90%以上の水様便になります。
下痢が長く続くと、脱水や電解質異常などが起こり、生命に関わる状態になります。
下痢の主な原因としては、抗がん剤による腸管粘膜障害や蠕動運動の亢進、
抗生物質による腸内細菌のアランバランス、腹部放射線照射による消化管粘膜の障害、
消化管切除術後の吸収不良、感染症、骨髄移植での免疫細胞による腸管細胞の破壊などがあります。
・抗がん剤による下痢
抗がん剤による下痢には、投与後24時間以内に出現する早発性と、
24時間以降に出現する遅発性があります。
早発性では、副交感神経の活発化による蠕動運動の亢進で、
遅延性では、粘膜障害では脱水や電解質異常などによって起こります。
粘膜障害では、脱水や電解質異常など重篤化することがあります。
・術後の下痢
膵臓切除術後や胆嚢摘出後には、脂肪の消化・吸収障害が起こり、
脂肪分の多い膵性脂肪下痢になります。
・下痢が出現しやすい抗がん剤の例
代謝拮抗薬 : メトトレキサート、フルオロウラシル、S-1、シタラビン
抗生物質 : アクチノマイシンD、ドキソルビシン塩酸塩
その他 : イリノテカン塩酸塩水和物、エトポシド
痛みの有無や程度
開腹手術による痛みや、がん性疼痛によって
腹圧がかけられず、排便時にいきむことができなくなります。
すると、排便が困難になり、便秘になりやすくなります。
手術やがんの痛みによって排便に影響がないかどうか確認します。
排便の状況を評価
排便の回数、便の性状、便の量、腹痛の有無など排泄パターンの変化を評価します。
便秘では排便に必要とする時間、最後に排便があった日、残便感などを確認し、
下痢の場合は、症状の持続時間や下痢のタイミングなどを確認します。
食欲低下や悪心・嘔吐、口渇、腹部膨満などの随伴症状、
症状によって出現する真理的な問題についての情報も収集します。
症状の程度を評価する際には、
米国NCIの有害事象共通用語基準(CTCAE)を参考にします。

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