看護記録の書き方のキホン

看護記録の書き方の実例 クレーム発生

事例: 患者名 A氏 65歳 男性

 

疾患名: 喉頭がん

 

家族構成: 一人暮らし

 

嗜好: タバコ30本/日 飲酒2合/日

 

経過: 
朝食を食べているときに喉に突っかかるような感じが出現し、その後一ヶ月で体重が3キロ減少した。
倦怠感あり。
近所の医院を受診したところ、精密検査を進められ当院を紹介された。
〇月〇日入院となり、ナースステーションから離れた個室に入所。

 

インシデント発生状況:
喉頭がんで入院。
A氏は、ヘビースモーカーで一日タバコを30本吸っていた。
入院時、禁煙できないことを予測し、主治医から当院は敷地内禁煙のためタバコを吸えないことを説明し、納得されていた。
時折呼吸苦が認められ、酸素吸入をしている。
今後、喉頭がん摘出術を行う予定である。
数日前から職員が部屋を訪室すると部屋の中でタバコのようなにおいを感じるようになった。
喫煙現場は確認できず、タバコを吸っているか確認したが「吸っていない」と返答あり。
入院して10日目の朝、個室のトイレでタバコを吸っているところを発見したため、
禁煙になっていることを再度説明すると、
タバコを吸えないことや看護師の対応に関するクレームが聞かれた。

悪い記載例

〇月〇日
23:00 部屋に行くと、タバコのにおいがする。
タバコを部屋で吸っているようだが入眠している。
部屋の中にタバコの吸殻は見当たらない。
しかたがないので明日の朝、タバコを部屋で吸ったかどうか確認することにした。
状態変化見られないので退室する。

 

〇月〇日
6:15 検温のため部屋に行くと、タバコのにおいなし。
BP138/92、T37.0℃、P96、R24.
咽頭の違和感軽度あり。
咳なし。息苦しくないが、だるいのは変わらないとのこと。
活気見られず。
7時に朝食を運んでいったところ不在。
タバコのニオイがする。

 

タバコの吸殻があるかどうか確認しているとA氏がトイレから出てくる。
トイレが白く煙っていたので確認すると、
「タバコを吸って何が悪い」という。

 

「個室だから誰にも迷惑はかけないだろう。」
「入院したときから人のことをうたがってたんだろ。」など、
看護師に不満をぶちまける。

 

入院中は、検温などもあることを話すと「そんなことは知らない。」、「帰れ」
などとどなって、そっぽを向いてしまう。

 

タバコを吸ってはいけないことを説明するが話が通じない。

 

「犯人扱いしているような奴と話しをしたくない。」、
「病院で勝手に決めているだけだろう。」、
「具合が悪いんだから出て行ってくれ。」と怒鳴り散らす。

●修正が必要な場所

@ 「しかたがないので」など、感情の表現は看護記録には記載しません。

 

A 実際にタバコを吸っている場面や吸殻を見つけたわけではないので、においの原因を「タバコ」と限定しません。
「タバコのようなにおい」と記載するにとどめ、憶測や推測の記述をしません。

 

B 患者さんを不審に思って記入していることが伺える文章となっています。
看護記録は客観的に記載します。

 

C 患者さんの話し言葉を表現する場合は、患者さんのクレームの要因が探れる事も多いので、患者さんが話した言葉ありのままを記載します。

 

D 患者さんの話した言葉は、「など」とせず、ありのままを記載します。

 

E 「そっぽを向いてしまう」の表現は個人の感情が含まれている表現なので、看護記録には適切でありません。

 

F 「話が通じない」は、患者さんの感情や意思を尊重していない表現なので、看護記録には適切でありません。

 

G 「どなる」、「どなり散らす」という表現は、声高く叱るという意味なので、看護師個人の感情が移入されている表現のため適切ではありません。

良い記載例

<タバコに関する経緯>

 

〇月〇日
23:00 点滴のために訪室する。
部屋全体にタバコのようなにおいがあり、A氏は入眠している。
喫煙したかどうかは確認できなかった。

 

〇月〇日
7:00 朝食を配膳時、A氏不在。
部屋にはタバコを吸ったような臭いが充満していた。
退室しようとしていたところA氏が、ライターとタバコを持ってトイレからでてきた。
トイレが白く煙っていたので確認すると、
「タバコを吸ってなにが悪い、個室だから誰にも迷惑はかけないだろう。」
「入院したときから人のことを疑ってたんだろ。」
「昨日の夜こそこそと入ってきたな、普通部屋に入るときには声をかけるだろ。」
と、看護師に向かって大きな声で話される。

 

昨日は点滴の確認に訪室したこと、タバコを吸ってはいけない理由として、
「病院は酸素が配管されており、火を使用すると引火の可能性があること、
Aさんもときどき酸素吸入を行うため非常に危険であること、
また、病気に対してもよくないこと。」を説明したが、
協力は得られず、
「どうせ疑ってこっそり来たんだろ、知ってるんだぞ。」
「今日だってこっそり入ってきたじゃないか、静かに過ごしたいから個室を希望したんだから入ってくるな。」
と強い口調で話される。

 

食事を持っていたためドアをノックしなかったことに対して謝罪した。
「そんなことは知らない。」、「帰れ。」と語気を強めて話され、
窓のほうを向いてしまう。

 

再度、禁煙の必要性について繰り返すが、
「犯人扱いしているような奴と話したくない。病院で勝手に決めているだけだろう。
そんなことは知らない。具合が悪いから出て行ってくれ。」と、
看護師のほうを振り向き大きな声で話される。

 

入院中は、患者さんの安全を確認するため訪室することを話すと
「そんなことは知らない。」、「帰れ」といい、窓のほうを向いてしまう。

 

数十分後に食事を下げに来ることを話し、退室する。
B看護長とC主治医に上記報告し、午後に再度説明することになる。
 看護師 〇〇

 

記載上の注意点

患者さんや、患者さんの家族からのクレーム発生時の記録は、
個人的な感情に支配された記録になってしまいがちですから注意が必要です。

 

患者さんの病院ルールから逸脱している行為は、
客観的で事実が詳細に見える記録を書くことで現状が把握でき、
患者さんへの対応につなげることができます。

 

患者さんの言葉をそのまま記載し、
患者さんの言動を客観的に表現して記載することが大切です。

 

「しかたがないので」や「そっぽを向いてしまう」、「どなりちらす」という表現は、
看護記録には不適切なため、記載しません。
個人の感情を含めず、ありのままを客観的に記載します。

 

クレームに関する報告を誰にどのようにしたかを記載し、
今後の方向性を示します。