看護記録の書き方の実例 ベッドからの転落
事例: 患者名 Aちゃん 7ヶ月 男児
疾患名: 気管支喘息
家族構成: 両親と祖父と4人暮らし
面会状況: 日中、母親と祖父が交代で面会に来ている。
経過:
〇月〇日、喘息発作出現。ER外来受診し点滴開始。
経過を見るが喘息が治まらず、食事もとれていなかったため入院となる。
インシデント発生状況:
入院2日後の朝から活気が出てきていた。
朝の回診の結果、点滴は終了し抜去となる。
昼過ぎから母親が面会にみえていた。
16:00に母親がオムツを交換した直後にベッドから転落していた。
悪い記載例
〇月〇日
16:00 看護師が廊下を歩いていると7号室から「キャー!!Aちゃん!!」と叫ぶ声がするため急いで訪室するとベッドから転落していた。
大声で泣いている。
頭はてっぺんに少し発赤があるが、他は打撲している様子なし。
主治医に報告、診察を受ける。
どうしたのか母親に確認すると、
「オムツを取り替えてちょっと目を離した隙に落ちちゃって」と、
びっくりした顔で話す。
医師から様子を観察するよう指示があり。
お母さんは話が通じずなかなかルールが守れないが、
再度、目を離すときには必ずベッド柵をあげる様再度説明した。
修正が必要な場所
@ 感嘆符「!(エクスクラメーションマーク)」は、看護記録には記載しません。
A 「急いで」など、主観的な表現は避け、経時で記載します。
B 看護師は、Aちゃんが転落した場面を見ていないので、Aちゃんがどのような状況にあったのかを詳細に記載します。
C 「頭はてっぺん」という表現は不適切。看護実践記録としての専門用語を使用して記載します。
D Aちゃんの転落時の状況は主治医に報告する前に確認します。
記載することによって医師も正確な状況を把握することができます。
E 診察の結果や、医師が判断した状況も記載します。
F 母親の表情や行動の記載が主観的に書かれています。主観的ではなく、母親の様子も客観的に記載します。
G 母親にベッドからの転落予防についての説明がどの程度認識されているかを記載すると今後のケアに活かすことができます。
H 医師が患者を診察した結果や、今後の治療の方向性についても記載します。
I 今後の母親にも注意して欲しい観察内容も記載します。
J 母親に転落防止の説明をしたこと、母親の言動などは、今後のケアにつながるので記載します。
良い記載例
〇月〇日
16:00 看護師が廊下を歩いていると7号室から、
「きゃー、Aちゃん」と大きな声が聞こえたため訪室すると、
頭は床頭台に向き、ベッドに平行な形で横になって激しく泣いているAちゃんを発見する。
母親が抱くと数分で泣きやむ。
看護師〇〇
16:05 頭頂部に発赤軽度あり。ほかには打撲痕見られず、悪心・嘔吐lなし。
母親に転落時の状況を確認すると、
「オムツを取り替えてちょっと目を離した隙に落ちちゃって。」
と、目を見開いて話されていた。
看護師〇〇
16:10 主治医に報告。診察を受ける。
医師より母親に対して、ベッドから転落したことによる危険性についての説明と、
これからX線撮影することが説明された。
今後Aちゃんに吐きそうな様子、或いはミルクを吐いたりすることがあれば教えてほしいことを話すと
「分りました」と返答あり。
入院時、ベッドからの転落防止の説明を行っているが、
「入院したときは、おじいちゃんが連れてきてくれたんです。
柵をあげることは入院案内で読みました。」
「うちでもよく落ちるんですよね。」と話されており、
2日前にも、母親の面開示、柵をあげていないことがあったため、
再度目を離すときはベッド柵をあげるように説明した。
看護師〇〇
16:25 頭部のX線撮影施行。
看護師〇〇
16:45 頭部X線検査の結果、異常所見なし。
看護師〇〇
記載上の注意点
小児のベッドからの転落の危険度は、
養育者の説明に対する理解度や受け止め方、
そして環境要因に影響されることが大きいです。
そのため、ベッドからの転落防止対策についての説明を誰にしているか、
話した相手がどのように理解しているかは、
今後のケアをジッさんしていくうえで大きな鍵となります。
そのため、インシデントが発生した場合は、詳細に記載するようにします。