看護記録の書き方のキホン

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看護記録の書き方の実例 胃がん手術前の面接

事例: 患者名 B氏 62歳 男性

 

疾患名: 胃がん

 

家族構成: 一人暮らし、姉が遠方に在住

 

経過:
半年前から食欲低下あり。
体重が7kg減少した。
一人暮らしで、食べられそうなときはコンビニエンスストアで弁当を購入していた。
最近ふらつくようになり、食欲がない事も心配になり近くの医院を受診。
胃がんを指摘され、手術目的で当院外科病棟へ入院する。

 

患者の状況:
胃がんで、胃全摘切除術施行予定となる。
外来にて疾患と手術の必要性について、医師より説明を受けていた。
これまで入院したことはなく、入院や手術に対する不安を外来看護師に訴えていた。

悪い記載例

# 知識不足(特定の)

 

S: 何を質問したらよいか分らないし、イメージがわかない。
ご飯とか食べられるようになるのかな。

 

O: 主治医より、本人と家族にムンテラが行われる。
ムンテラ後、上記の言葉あり。
聞きたいことがあればいつでも言うように説明する。
手術前オリエンテーションについては理解を得る。

 

A: 説明されたことについては何となく理解されている様子だが、十分な理解を得たとは言いがたい。
今後の治療がスムーズに進み、必要な知識を身につけていくよう援助していく。

 

P: 手術を迎えるため、計画は終了とする。

 

 看護師〇〇

修正が必要な場所

@ 知識不足とは、何に対しての知識不足なのかが特定されていません。
手術に関することなのか、分るように記載します。

 

A ムンテラは造語であるので、看護記録への記載は不適切です。
「病状説明」などと記載します。

 

B 「聞きたいことがあれば」ではなく、食事方法など具体的に提示し、その反応をを記載します。

 

C 「手術前オリエンテーションに対しての理解」は、どのような患者の言動からと考えたのか不明です。
説明を受けた患者さんが、説明をどのように受け止めているのか、根拠となるような情報を記述します。

 

D 「何となく理解されている様子」とアセスメントしていますが、抽象的です。

 

E 病状説明に対する患者さんの反応を具体的に記載していないので、根拠となる情報がないままアセスメントしています。

 

F この患者さんにとっての必要な知識がどのようなものなのかが分りません。

 

G 「十分な理解を得たとは言いがたい」とアセスメントしているのに、手術を迎えれば「終了」としていて、記録内容と計画が不一致です。

良い記載例

# 知識不足(手術)

 

S: 何を質問したらよいかわからないし、イメージがわかないね。
ご飯とか食べられるようになるのかな。

 

O: カンファレンス室にて主治医より、本人と姉に病状説明を行う。
受け持ち看護師Aも同席する。
術式や手術後の離床の必要性、退院後の食生活などの説明をうつむきながら聞いている。
主治医からの説明に対しては「分った」と話す。
自室に戻ってから、手術後の食事方法など質問はないか問うと、
上記の発言あり。
自室にて、看護師から再度食事摂取方法などを説明すると、
何回も頷きながら聞いている。
説明後には「がんばるしかないよね、元気になって家に帰りたいしね。」と話す。
手術に関するパンフレットは事前に渡し、説明していたが、読んではいなかった。
本日の説明後は、繰り返しパンフレットを読んでいる。

 

A: 手術や手術後の食生活などに対する不安が大きく、
言動や説明に対する態度から、まだ前向きに取り組んでいく気持ちになれていないと考えられる。
手術後の離床の必要性や、胃全摘後の分食方法など理解ができないままでは、
自分で必要と思って取り組むことができず効果的にできない恐れがある。
主治医からの説明だけではなく、自室で看護師からも再度説明すると、
熱心に聞き、パンフレットも読み始めている。
分らないと感じた部分について、分らないままにせず、質問に答えていく、
分らないという不安を感じたまま手術を迎えることがないよう、
支援していく必要がある。
繰り返し説明することで、手術後の離床や分食などの必要性を理解し、
前向きに取り組んでいけるように指導を行っていく。

 

P: パンフレットを使用し、手術後の離床の必要性など合併症予防について
言動や表情から理解度を確認しながら説明を行っていく。
手術後、胃全摘術切除後の食事指導については、
手術からの回復や食事摂取状況を確認しながら段階的に指導を行っていく。

 

 看護師〇〇

記載上の注意点

病名告知や病状説明などの内容は、
説明した当事者(医師)が記載します。
同席した看護師は、説明した内容に対して、
患者・家族がどのような反応であったのか、
どのように受け止めたのか観察し、
観察した内容を客観的に記載していくことが必要です。
看護師としてどのような支援が必要なのかを見出し、
記載漏れのないように記録を残すことが大切です。

 

病状説明に使用した部屋や同席者など、
どのような状況で説明したのかを記述し、
患者さんの反応についても記載します。