看護記録の書き方のキホン

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ケーススタディとは

実習後の振り返りや卒業研究などで、
ケーススタディを経験しますが、
いったい何から手をつけていいのか、
どのようにまとめればいいのかがとても難しいです。

 

そこで、ケーススタディがうまくいく方法を見ていきます。

 

ケーススタディとはケーススタディ(Case Study)のことで、
日本語では「事例研究」訳されることが多いのですが、
「事例報告」、「事例検討」、「ケース検討」、
「ケース研究」、「症例研究」、「事例研究法」、「ケースメソッド」、
「事例的方法」、「モノグラフ調査」、「ケアスタディ」、「ケースレポート」
と言うように表現されることがあります。

 

そして、これらの言葉は、同じ意味で用いられていることもあれば、
文献や研究者によって微妙に違うという場合もあります。

ケーススタディの目的

ケーススタディには、「ケースについて検討する事(研究のためのケーススタディ)」、
「ケーススタディを通して看護などの研究や実践の仕方を学ぶ事
(教育のためのケーススタディ)」と言うように、
大きく分けて二つの目的があります。

 

・ケースについて検討する事(研究のためのケーススタディ)の目的

 

@ あるケースをよく観察して、具体的に広い視野で多面的に詳しく分析する。
  そして、鋭い感性によって総合的、統合的、全体的に理解し記述していく。

 

A @のケースの中から、ある事実と事実の関係性を探り、
 なぜ、このようなことが起きたのか、
 その原因と結果のつながりを見つけ出し、
 さらに一般的な法則・原理・構造・理論を発見するための憶測をする。

 

B 実践的なケースの場合は、事実の一種である問題を解決するための解決法・対策・
 援助(治療・指導)などを見つけ出し、よい援助のための一般原則や実践理論体系を作り出す。

 

・ケーススタディを通して看護などの研究や実践の仕方を学ぶ事(教育のためのケーススタディ)の目的

 

ケーススタディを通して看護などの研究や実践の仕方を学ぶ事
(教育のためのケーススタディ)は、
看護基礎教育や初・中期の院内教育で用いられることが多いです。

 

特に学生や新人看護師の場合、研究も実践も殆ど経験がありません。
ですから、まず、学習することが必要です。

 

研究の仕方もそうですが、その前に、
患者さんに対する適切な援助が出来るかがどうかが課題になるでしょう。

 

そこで、必至に取り組んでいる実習や職場での看護実践について振り返る機会として、」
このケーススタディが活用されているのです。

 

本来のケーススタディでは、研究する本人が、
研究テーマや研究目的を決め、
対象となる患者さんや病棟を選びます。

 

ですが、看護学生の場合は、学生の学習の必要性によって
テーマや目的が選ばれることが多いです。

 

また、看護師の場合、日々の看護について患者さんの選択の余地はありません。

 

ただ、ケーススタディが課されている看護師は、
担当看護師(プライマリーナース)として、
対象患者さんの看護計画等の責任を持つような体制になっている病院もあります。

ケーススタディの行ない方

(1) テーマを設定する

 

テーマ(表題)は、ケーススタディの顔です。

 

もっとも熟慮して決めるべきところです。

 

普通は、タイトルを決めてから本文を書き始めますが、
最初から内容にぴったりと合った表現が出てくることはありません。

 

まずは「仮題」としておけば良いでしょう。

 

分析を進めるうちに、このケーススタディでは
何を主張したいのかが徐々に明確になってきます。

 

そして、最後には、ケーススタディ全体の内容、
目的、対象の特性、方法等を簡潔に表すことが出来るタイトルを見つけることが出来るでしょう。

 

(2) 取り組みの動機を書く

 

「はじめに」のなかに、ケーススタディを行なおうとした動機を書きます。

 

読者は、「はじめに」の部分を読み、興味を持って読もうかどうしようか・・・
心構えを作ります。

 

動機からスタートさせれば、読者は心の準備がしやすくなります。

 

ただし「初めに」の部分も、表題と同じように最初からウマく書けないという場合も多いです。

 

その場合は、最後に書くようにしても良いでしょう。

 

また、文献などもどんどん活用してみましょう。

 

たとえば、世界・国レベルの情報など全体的な状況から書き始め、
特定の都市や病院、疾病、年齢などの個別の状況を記していくと、
文章の流れがスムーズです。

 

次に、書こうとするケーススタディの焦点であるテーマへと
文章をつなげていきます。

 

ケーススタディを行なう意義が明確で、
論理的に説明する事が大切です。

 

また、概論や理論、枠組みを使ってまとめていくときには、
基盤となる概念や理論、枠組み、考え方、視点についての説明も
とても重要なポイントになります。

 

「はじめに」の中で説明しても良いですし、
項目を別に立てて説明しても良いでしょう。

 

(3) ケーススタディの目的

 

目的は、どのケーススタディにおいても必要です。

 

テーマと同じように、対象の特性や分析の視点などが含まれ、
何を明らかにしようとしているのかについて、
簡単に、そして適切に表現することが必要です。

 

そして、ケーススタディを始めたときに設定した目的に沿って分析を進め、
その結果、考察を行なう際は、必ず、
目的からずれていないかどうかを照らし合わせながら行ないましょう。

 

もし、ケース分析を進めていくうちに、
初めに設定した目的やその表現が、
不的確だという子とが判明した場合は、
目的表現の修正が必要かもしれません。

 

目的と論文の内容が一貫するように、
常に「目的」を意識しながらスタディを進めていくようにしましょう。

 

「はじめに」の項に目的を記載するときは、
「目的は○○○を明らかにすることである。」、
或いは「○○○がこのケーススタディの目的である。」
と言うように明記します。

 

そして、看護目標とケーススタディの目的を混同してはいけません。

 

看護目標とは、患者さんがどのような状態になったら良いのかという
看護の方向性を示すものです。

 

ケーススタディの目的は、ケーススタディ、つまり事例分析をした結果、
何が明らかになるのか、何を明らかにしたいのかというものです。

 

(4) ケーススタディの方法

 

ケーススタディは、一つの研究方法ですから、
まず、1例のケーススタディなのか、
複数事例を用いるのかを明示しましょう。

 

そして、患者さんとの面接データや実収記録、観察記録、
看護記録、診療録、家族からのデータ、患者さんの手記など、
情報源について、つまり、どのようなデータを用いたのかを述べます。

 

さらに、これらの情報が、どのようにして集められたのか、
どのように分析をするのかについて記載することが必要です。

 

また、なぜこの方法を選んだのかという説明も含め、
ケーススタディの目的を達成するための適切な方法であるのかどうかについても
述べると良いでしょう。

 

ケーススタディを「質的研究」のひとつとして考えることもあります。

 

ですが、ケーススタディは、あくまでも事例を扱うということで、
そのデータは言葉などの質的データも、
血圧や体重、検査データなどの量的データも
分析の対象になります。

 

そして、ケーススタディの方法は、看護計画の具体的援助方法とは異なります。

 

(5) 倫理的配慮が必要

 

研究においては、倫理的配慮が必要です。

 

実習で受け持った患者さんや、日常ケアの対象者に、
研究の同意を得ることは重要です。

 

日常のかかわりの中で、十分な人間関係を作っておけば、
了解が得やすくなるでしょう。

 

そして、業務で関わっている対象者を研究の対象にする場合は、
業務と研究との区別を明確にしておかなければなりません。

 

ケーススタディに限らず、研究は「対象者から学ばせていただく」、
「対象者との関係があってこそ看護学が発展する」という姿勢を
持ち続けることが必要です。

 

あらかじめ、研究目的を設定してから患者さんに関わるときは、
他の研究と同じように、研究の目的や方法等を
書類や口頭で説明をしてから始めます。

 

ですが、事例を分析する等の教育的ケーススタディでは、
実践をしながら、このケースはまとめる必要がある
ということもありますし、
「小児・成人・母性」などの実習を終えてから、
その中から1つのケーススタディを提出しなければならないことがあります。

 

このような場合、途中でもよいので、事例を分析し、
そこから反省や学んだ事等を今後の看護ケア向上のために
他者にも発表して役立てたいと、
対象者に伝えてみてはいかがでしょうか。

 

たとえば、「看護ケアの向上のため、まとめさせていただきたいです。
発表するときは、患者さんが特定できないように、
厳重に配慮いたします。」と言うように伝えます。

 

これは、学会発表だけでなく、
学内や院内などの小さな範囲での発表の可能性がある場合も同じです。

 

実際は発表の機会がないこともあるでしょう。

 

ですが、分析したが癖宇屋看護師の看護の質を高める事には
そのケーススタディは必ず役に立ちます。

 

口頭でも良いので、必ず同意を取っておきましょう。

 

さて、ケーススタディを記述する場合ですが、
倫理的配慮についてどの程度を記載するかは、
原稿全体のバランスを考えます。

 

* 倫理的配慮として記述すべきこと

 

 ・ 事例を分析する、つまりスタディを行なう者の立場を明確にする。
  (学生である、ナースである、研究者である、など。)

 

 ・ 対象者をどのように決定したか。

 

 ・ 研究参加(協力)への説明をどのように行い、どのように同意をとったか。

 

 ・ 施設の倫理委員会の承諾を得ている場合はその旨を記述する。
  (「倫理委員会の承諾を得ている」と記載するだけでは不十分なので、
  対象者の権利・プライバシーの保護が研究プロセスにおいて配慮されていることが
  読者に伝わるように記載してください。
   例: T氏(患者名)、○○歳代(年齢)」など。
  また、必要なときの家族構成や背景をアレンジしたり、
  入院年月日を○○年というように表記しましょう。)

 

 ・ 倫理的配慮は、方法の中に小さく項目を立てることが多いです。
   ですが、対象のリクルート、研究プロセス等にも、
  具体的にどのように配慮したかを含めながら記載することもあります。

 

(6) 事例の紹介(全体像の把握)

 

ケーススタディには、ケースの紹介が不可欠で、
読む人に患者さんのイメージが伝わるように記載することが必要です。

 

情報の量や質については、レポートの量やテーマによってさまざまですが、
簡潔にまとめ、「伝わりやすい」、「読みやすい」様に仕上げることが大切です。

 

レポートの主な目的が「患者紹介」であれば、
十分な患者情報が必要ですが、
そうでない場合は、患者さんの全体像は、
その後の経過や考察などを述べる本論で、
最低限必要とされる内容を記述します。

 

入院患者さんに関するケース照会をするのであれば、
入院前の患者さんの状態だけでなく、
治療や看護の経過、患者さん自身の経過も簡潔に述べ、
最終的にどのような結果だったのかまで紹介します。

 

そして、後の本論で入院中のことについて述べます。

 

全体的な経過の概要がつかめるように、
ある程度の情報は記載しておくと良いでしょう。

 

(7) 看護目標

 

対象者である患者さんは、何らかの目的を持って看護職との関わりをスタートします。

 

病院であれば、特定の治療や検査を受けるという目的ですし、
地域であれば在宅で看護師の訪問を受けて
生活を維持するという目的があります。

 

そのとき、看護師は、「何をめざしてケアを実施するか?」
と言う方向を示す必要があります。

 

そして、ケーススタディを行う際には、
さらに適切な表現なども検討することが必要です。

 

必ずしも、項目として「看護目標」を挙げなくても良いかもしれません。

 

ですが、看護上の問題と関連で、目標を明記すれば、
実践の方向性を確認することが出来るでしょう。

 

(8) 看護診断や課題などの看護上の問題とその問題が導きだされた過程

 

看護師と患者さんとの関係は、
患者さん側に何らかの専門的援助が必要になったときに成立します。

 

その際、患者さんと看護師が共通して認識しておく事に、
「看護上の問題」があります。

 

看護診断、課題などの看護上の問題は、
必ず患者さん自身がはっきり認識しているものばかりではありません。

 

専門的な視点で問題が明確になることもあります。

 

看護師は、看護上の問題が、どのような情報から、
どのようにアセスメントされて導き出されたのかを明確にすることが必要です。

 

アセスメントと導きだされた看護上の問題を明らかにし、
看護の方向性を定めます。

 

看護目標と看護上の問題を解決したときの目標は、必ず一貫性があります。

 

「問題」と言う言葉を用いると、
「患者さんは問題を持った人」というイメージになってしまいます。

 

ですが、そうではなく、「患者さんは、解決しなければならない課題を持ちながら生活している人」
と言う視点にたち、課題の解決の主体は患者さんであること、
そして対象者である患者さんを援助するのが看護師であるという構造図をはっきりさせましょう。

 

(9) 看護の実際と経過及び評価

 

看護上の問題が明確化されると、それぞれに対して「看護介入」が計画されます。

 

なるべく、看護上の問題ひとつごとに、
解決に向けた計画と、どのように計画が実践されていったかについて
まとめることが必要です。

 

看護は、患者さんと看護師の相互関係の中で進んでいくものですから、
看護師が行なった行為だけでなく、
患者さんの反応や実施状況を必ず記載するようにします。

 

看護の実際と経過については、
ケーススタディの目的やテーマによってさまざまな書き方をします。

 

自分が書きたい内容がもっともよく表現できるような構成を工夫し、
仕上げていきましょう。

 

そして、その記述そのものが、ケーススタディで分析する
重要な内容の部分になってきます。

 

読者が事例の全体的な経過をイメージできるようにまとめてください。

 

評価については、看護上の問題について実践を行い、
その経過を通して問題解決や課題が、どの程度達成できたのか、
今後に残された課題や新たな問題点についてなど、
実践の評価についての記載も必要です。

 

特に教育的にケーススタディを行っている場合は、
この部分をまとめていく中で、ケーススタディの目的が
より明確になってきます。

 

また看護の実際や経過、評価については、
論文の一貫性を保って記載していくことが必要です。

 

(10) ケーススタディの結果

 

ケーススタディの結果は、当然、設定した目的に沿って分析していくことが必要です。

 

ケーススタディの目的が、ケースに対する看護実践を通して、
対象者の経過をある理論・枠組みやテーマを軸に分析して、
今後の看護への示唆を得るというような設定だった場合、
その設定した目的に沿った分析を述べていきます。

 

また、全体のまとめや解釈等を述べていきます。

 

ただし、言葉などの質的データを分析したときは、
データだけを結果として記載し、
そこから読み取れた内容を「考察」の項にいれてしまわないようにしましょう。

 

データの分析をするための解釈内容は、
結果のなかに述べるようにします。

 

(11) 考察を述べる

 

ケーススタディの目的によって、どのような視点で考察を進めていくのかは、
必然的に決まってくるでしょう。

 

分析過程における解釈そのものは「結果」のなかに述べますが、
患者さんに対する看護の実践や、結果に記載した内容(経過報告)を通して、
研究者自身の解釈や考え方を述べたり、
解釈が妥当であるかどうかを検討します。

 

このとき、先人の研究結果や論述を比較し、
検討する事が必要です。

 

先人の研究結果や論述を比較し、検討し、
その内容を記載することで、
一人よがりの分析や解釈ではななくなり、
「看護学」としての洞察が深まります。

 

とはいっても、もっとも大切なことは、
目的が達成できるような考察になっているかどうかですから、
単なる感想文の様にならないように、
設定したケーススタディの目的を達成するための「考察」が必要です。

 

概念や理論、枠組みを使用した場合は、
実践との関連についての考察が必要ですから、
使用した概念や理論、枠組みが適切であったのかどうかの検討も必要です。

 

そして、それが有益であったのであれば、
今後類似したケースに対応するときに、
そのケーススタディが役立つかもしれません。

 

更なる工夫が必要なのであれば、
それはなぜなのか、
そして、どのような工夫の可能性がある野花等を検討することも、
今後の看護に大いに役立つ考察になるでしょう。

 

他の看護師の看護実践にも活かしてもらうことができるように、
読みやすく、明確に表現することが重要です。

 

(12) 結論

 

事例(ケース)をテーマに基づいて分析したら、
その結果を示し、結果を考察し、その後、全体を要約する形でまとめましょう。

 

そして、最後に今後の課題についても述べておくと、
発展的なケーススタディに仕上げることが出来ます。

 

消極的な研究者は、一事例の分析のため、一般化できないと控えめに結論付けてしまうことがあります。

 

ですが、ケーススタディで取り上げた特定の状況や対象者の特性と言う文脈の中では、
他の事例や状況に適用していく視点や知識の発見が出来るかどうかが、
ケーススタディの最も重要な意義であるといえるでしょう。

 

ですから、自分が行なった、今回のケーススタディが、
今後どのような場面で活用できる可能性があるのか、
積極的に表現してみてください。

 

ケーススタディの目的が達成されたかどうかを確認するところでもあるのが、
この「結論」です。

 

一般的なまとめにするのではなく、自分らしいまとめを書くようにしましょう。

 

そして、単なる感想文にならないように注意してください。

 

たとえば、「コミュニケーションの大切さを改めて学んだ。」と言うのではなく、
ケーススタディでは、「このケーススタディの結果、
このような方法でコミュニケーションを用いれば、
コミュニケーションが円滑になり、今後、類似状況におかれた患者の看護に役立てることができる。」
というように記載します。

 

(13) 文献を活用する

 

ケーススタディでは、自分の解釈や分析が独りよがりになっていないかどうかを
明らかにするために文献を用いることが多いと思います。

 

研究的な論文になればなるほど、先人の研究成果や理論との対応が要求されます。

 

文献を活用し、自分と似たような事例の分析や参考にした分析方法などを照合させながら、
自分のレポートの内容を深め、説得性のある論旨を展開させていきましょう。

 

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