虚血性心疾患の鑑別に使う検査異常値
心筋への血流が阻害されて起こる虚血性心疾患には、
「狭心症」と「心筋梗塞」があります。
「狭心症」と「心筋梗塞」のどちらも、
致死的なリスクが高いため、迅速な対応をすることが大切です。
心筋梗塞が疑われる場合の検査
自覚症状や身体所見などから心筋梗塞が疑われる場合、
基本的検査として以下の検査を行います。
(1) 心電図
(2) 血液検査(WBC、赤血球数(RBC)、Hb、ヘマトクリット(Ht)、血小板数(Pit)
(3) 生化学検査(AST、ALT(GPT)、LD、CK、CRP)
(4) 胸部X線検査
(5) 心筋マーカー
この(1)から(5)の検査を行った上で、心筋梗塞が疑われる場合は、
心エコー検査、冠動脈CT検査が行われます。
これらの検査で心筋梗塞の疑いが強くなれば、
治療もかねて心血管造影検査を行います。
心筋の状態を示す検査値
心筋の状態を示す代表的な検査値としては、
クレアチニンキナーゼ(CK)/クレアチンキナーゼ心筋型アイソザイム(CK-MB)、
トロボニンT、AST(GOT)、LD(LDH)などが挙げられます。
クレアチニンキナーゼ(CK)/クレアチンキナーゼ心筋型アイソザイム(CK-MB)、
トロボニンTは、心筋マーカーと呼ばれ、
筋組織返しすると血中に逸脱する酵素です。
心筋について特徴的に現れるもので、
高値を示す場合は、心筋が傷害されていると考えられ、
心筋梗塞の発症や経過を判断する際に役立つ検査値です。
クレアチニンキナーゼ(CK)/クレアチンキナーゼ心筋型アイソザイム(CK-MB)
CK(クレアチニンキナーゼ)は、筋細胞に多く含まれる酵素です。
MM(骨格筋型)、BB(脳型)、MB(心筋型)という3つのアイソザイム
(同一の反応を触媒する分子構造の異なる酵素群)があり、
心筋に多くみられるCK-MBは、
代表的な心筋マーカーとして心筋梗塞の診断に広く用いられています。
トロボニンT
トロボニンTは、心筋細胞に特徴的に存在する収縮蛋白で、
他の心筋マーカーよりも特異性が高いものです。
そのため、早期心筋傷害が疑われる場合は、
第一選択として用いられています。
AST(GOT)、LD(LDH)
AST(GOT)、LD(LDH)はいずれも脱逸酵素で、
存在する臓器の細胞が傷害されると高値を示します。
心筋の傷害によって上昇しますが、心筋に限って反応するものではありません。
AST(GOT)は、代表的なアミノ酸転移酵素で、
心筋、肝臓、骨格筋、腎臓などに含まれ、
乳酸脱水素酵素であるLD(LDH)は、心筋、肝臓、肺、腎臓、骨格筋、血球などに含まれます。
AST(GOT)、LD(LDH)のみで、心筋梗塞かどうかを判断することは難しいです。
しかし、いくつかのデータを組み合わせることによって、
心筋梗塞の可能性を疑うきっかけとなります。
また、傷害を受けているので、
炎症を示す白血球数(WBC)やC反応性蛋白(CRP/炎症マーカー)の数値も高くなります。
デスから、既にこれらのこれらのデータが分っている場合は、
心電図とあわせて判断の指標とします。
心筋マーカーの特徴の違い
心筋マーカーは、クレアチニンキナーゼ(CK)/クレアチンキナーゼ心筋型アイソザイム(CK-MB)と、
トロボニンT、心臓型脂肪酸結合蛋白(H-FABP)、心筋ミオシン軽鎖Iの4つです。
心臓型脂肪酸結合蛋白(H-FABP)は、心筋細胞質に存在する小分子蛋白で、
心筋が傷害を受けるとすぐに流出します。
心筋ミオシン軽鎖Iは、心筋の筋線維を構成する蛋白で、
心筋壊死によって上昇します。
このような心筋マーカーの大きな違いとしては、
「発症後上昇するまでの時間」が挙げられます。
つまり、それぞれのマーカーによって、
心筋梗塞発症後から上昇までの時間が異なるということです。
そして、経過も異なります。
ですから、超急性期の心筋梗塞には心臓型脂肪酸結合蛋白(H-FABP)を、
発症時期がはっきりしない場合の診断としてはトロボニンTをなど、
状況に応じて実施する項目を変え、診断の指標とします。
ただし、心筋マーカーであっても、
他の病態によって上昇する事も十分考えられます。
ですから、心筋マーカーだけでなく、
心電図や心エコーの結果などとあわせて診断することが重要です。
心筋マーカーの上昇と経過
・クレアチニンキナーゼ(CK)
4〜8時間で上昇します。
24時間後にピークになります。
3〜4日で正常化します。
・/クレアチンキナーゼ心筋型アイソザイム(CK-MB)
4〜8時間で上昇します。
12時間〜24時間後にピークになります。
3〜4日で正常化します。
・トロボニンT
3〜6時間で上昇します。
12〜18時間でピークになります。
約2週間検出可能です。
・心臓型脂肪酸結合蛋白(H-FABP)
1〜2時間で上昇します。
5〜10時間でピークになります。
・心筋ミオシン軽鎖I
4〜8時間で上昇します。
2〜5日でピークになります。
1〜2週間検出可能です。
心エコー
心エコー検査を有効に使うことによって、心筋梗塞を早期診断することができます。
心エコーでは、心臓の壁運動の低下を調べます。
梗塞している場所や範囲が分りますし、心筋マーカーに異常がない場合でも、
壁運動低下があれば、虚血→壊死のリスクを想定することができるようになります。
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