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貧血の鑑別に使う検査異常値

貧血が疑われる場合の検査値では、ヘモグロビン(Hb)が低下しています。

 

貧血とは

 

貧血は、血液検査(CBC)において、ヘモグロビン(Hb)の値が低下した状態と定義されます。

 

男性の場合は、13g/dl以下、女性の場合は12g/dl以下で貧血と判断します。

 

貧血の症状

 

貧血になると、倦怠感、動悸、労作時の息切れなどの自覚症状を伴う事もありますし、
無症状で健康診断などで発見される場合もあります。

 

身体所見としては、皮膚や粘膜、爪の蒼白や心拍数亢進などが見られます。

 

大量出血時のデータの見方

 

急性の大量出血では、循環血液量が大きく変化します。

 

そのため、血中のヘモグロビンの濃度も一気に低下するとイメージしますが、
血漿も一緒に失われるため、
出血直後では、RBC、Hb、Htは正常値を示します。

 

貧血がデータ上に現れるのは、出血後3時間以降です。

 

貧血の原因の調べ方

 

貧血の原因を調べる時には、赤血球の大きさによる分類で原因を検索します。

 

貧血が起きる原因は様々です。

 

例えば、赤血球を作る素材が不足している、
造血機能が十分に働かない、
赤血球の破壊が亢進している(溶血)、
出血しているなどがおもな原因です。

 

Hbが低下し、貧血であると診断された場合は、
まず貧血の分類を確定し、原因の検索をしていきます。
この分類の指標となるのがMCVです。

 

赤血球の大きさを表し、CBCの際に自動算出されますが、
算出式を見ると、RBCとHtによって決められることが分ります。

MCVの算出式

MCV(fl:フェムリットル) = Ht(%)/RBC(万/μl)×10

 

MCVによる分類

 

(1) 80fl未満 → 小球性貧血

 

小球性貧血は、赤血球が正常よりも小さく、
ヘモグロビンの材料が足りないために起こります。

 

(2) 80fl以上100fl未満 → 正球性貧血

 

正球性貧血は、赤血球の大きさは正常で、
出血や溶血、造血機能の異常などの要因で貧血になっています。

 

(3) 100fl以上 → 大球性貧血

 

大球性貧血は、逆に赤血球が正常より大きく、
赤血球細胞を作る過程で必要な物質が足りないために起こります。

 

臨床の場合で遭遇する貧血の頻度は、
小球性→正球性→大球性の順番になります。

 

医師から、この患者さんは貧血があるといわれたら、
まずはこのMCVの値を確認します。

 

そして、その患者さんの貧血が、どの分類に当たるかを把握しておくことが必要です。

 

小球性貧血とは

 

小球性貧血は、鉄欠乏性貧血が原因となっていることが多いです。

 

MCVが80未満の小球性貧血の主な原因は、
鉄欠乏性貧血や慢性疾患などが考えられますが、
殆どは鉄欠乏性貧血です。

 

これを鑑別するためには、フェリチン(血清フェリチン)を検査します。

 

他には、血清鉄(Fe)や総鉄結合能(TlBC)などもチェック項目として挙げられます。

 

フェリチンとは、鉄とアポフェリチンが結合した鉄貯蔵蛋白で、
組織鉄の貯蔵とFeの維持を図っているものです。

 

小球性貧血のフェリチンの基準値と判断の目安

 

フェリチン1ng/mlは、貯蔵鉄8〜10mgに相当します。
そして、体内貯蔵鉄量を反映しています。

 

フェリチンが低下しているときは、鉄量も減少していると考えられ、
鉄欠乏性貧血と診断されます。

 

基準値は、男性30〜300ng/ml、女性10〜120ng/mlで、
貧血の診断基準は、男性20ng/ml以下、女性10ng/ml以下とされています。

 

フェリチンのみが低下していて、
Hbが正常である場合は、潜在性鉄欠乏であることが分ります。

 

鉄欠乏性貧血・潜在性鉄欠乏は、いずれも相対的に女性に多く見られます。

 

フェリチンが高い値を示している場合は、
貯蔵鉄が増加している鉄芽球性貧血、悪性腫瘍、血球貧食症候群などを疑います。

 

小球性貧血の出血減の鑑別

 

鉄欠乏性貧血の原因で最も多いのは、
消化器または子宮など、女性器からのじわじわと長期に及ぶ慢性出血、
或いは鉄の摂取不足です。

 

消化器からの出血があるかどうかは、
便潜血検査、或いは病歴聴取が判断の参考になり、
出血箇所を確認するために内視鏡検査を行います。

 

女性器からの出血の場合は、
婦人科を受診し、検査してもらいます。

 

正球性貧血とは

 

小球性貧血は、赤血球が過剰になくなったり、
十分に造血できなくなった場合に起こる貧血です。

 

MCVが80以上100未満の正球性貧血の場合、
急性出血、溶血性貧血、再生不良性貧血、白血病などが主な原因として挙げられます。

 

つまり、赤血球の過剰な喪失や骨髄の造血能が低下することによって起こる貧血です。

 

正球性貧血の鑑別診断

 

正球性貧血の鑑別診断を行う場合は、網赤血球数(網状赤血球数)を確認します。

 

赤血球は、幹細胞で発生した前赤芽球が段階を経て成熟して完成しますが、
網赤血球は、赤血球になる直前の段階の若い赤血球のことをいいます。

 

完全な赤血球よりもやや大きめで、骨髄の産生能を知る指標となります。

 

赤血球喪失の場合の鑑別

 

網赤血球を示す単位には、RBCに対する比率(%)と、
単位容積中の個数を示す絶対数(/μl)があります。

 

基準値は、RBCに対する比率(%)が0.5〜2.0%、
単位容積中の個数を示す絶対数(/μl)が5万〜19万/μlとされていて、
骨髄での造血能を知るためには
単位容積中の個数を示す絶対数(/μl)が5万〜19万/μlを用い、
10万/μlを超えている場合は、
骨髄での赤血球産生能が亢進していると推測します。

 

出血や溶血で、血液や赤血球が失われると、
身体はそれを補おうとして、赤血球をどんどん作り出すようになります。

 

それに伴い、未熟な赤血球である網赤血球も血中に放出されます。

 

出血が原因の場合は、まず、消化器や女性器などからの慢性出血を疑います。
そして、出血源を調べます。

 

溶血を疑う場合は、ASTとLD(LDH)、間接ビリルビン(BILL)の上昇、
ハプトグロビン(Hp)の低下により、その可能性を確認します。

 

ハブログロビンは、主に肝臓で生産されるヘモグロビン結合蛋白です。

 

赤血球産生が低下している場合の鑑別

 

貧血を示しているのに、網赤血球数が増加(10万/μl以上)していない場合は、
赤血球産生が低下しているということが推測できます。

 

この場合は、腎不全、内分泌疾患、肝硬変、薬物、亜鉛欠乏などを視野にいれ、
鑑別していきます。

 

さらに1万/μl以下というように極端な低下がある場合は、
骨髄機能の低下そのものが貧血の原因です。

 

骨髄性と腎性が考えられます。

 

・骨髄性の場合

 

骨髄性の場合は、RBCの他に、WBCと血小板の2系統を調べ、
WBCと血小板の両方が下がっていればより可能性が高いと判断します。

 

疑われる場合は、骨髄穿刺検査が必要です。

 

白血球や再生不良性貧血が代表的な病因です。

 

・腎性の場合

 

腎性の場合は、尿素窒素(BUN)やクレアチニン(Cr)、
エリスロポエチン(EPO)などを検査し、腎不全かどうかを調べます。

 

エリスロポエチンとは、腎臓で産生され、
骨髄に働きかけるホルモンで、赤血球の産生を促進しています。

 

出血が原因の貧血

 

出血が原因の貧血の場合は、
時期によって赤血球形態が変わります。

 

急性期は、正球性貧血であることが多いのですが、
時間の経過に伴い、次第に小球性貧血に移行していきます。

 

大球性貧血とは

 

MCV100以上の大球性貧血とは、Hbの材料はあるものの、
必要な因子が欠乏したり不足していて、造血できなくなる状態といえます。

 

不足しがちな因子としては、
ビタミンB12、葉酸、銅が考えられ、
このような時、赤血球は巨赤芽球性状態です。

 

・ビタミンB12が減少している場合

 

ビタミンB12が減少している場合は、
ビタミンB12の吸収に必要な物質・内因子に対する自己抗体である「抗内因子抗体」を測定し、
その結果が陰性の場合はビタミンB12欠乏性貧血、
陽性の場合は悪性貧血であると診断できます。

 

悪性貧血の場合は、胃がんによる事も多いため、
消化器悪性疾患を想定した内視鏡検査を行います。

 

上部消化管手術に伴って起こることもあります。

 

治療は、補充療法を行い、症状によっては骨髄検査を行います。

 

・葉酸が減少している場合

 

葉酸が減少している場合は、葉酸欠乏性貧血であると診断できます。

 

治療は、補充療法を行い、症状によっては骨髄検査を行います。

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