フィジカルアセスメント
フィジカルアセスメントとは、対話を交わしながら患者さんを観察し、
呼吸や心音を聞き取り、聴打診や触診をし、神経学的なアセスメントを行うことを言います。
病院など医療機関では、最先端の機器を使って医師が患者さんを診察できるので、
フィジカルアセスメントがあまり行われていないところもあります。
ですが、訪問看護の場合は、最先端の医療機器に頼って患者さんをアセスメントすることはできません。
そこで、看護師によるフィジカルアセスメントが大切になります。
訪問看護の際、看護師は、患者さんやその家族へのインタビューから主観的情報を得て、
看護師自身が行った視診や触診、聴診、打診の結果から客観的情報を得ます。
そして、主観的情報と客観的情報により、患者さんの身体状況を評価した結果が、
フィジカルアセスメントです。
具体的には、毎回の訪問時に主訴、既往歴などの主観的情報を聞き取りながら、
バイタルサインや一般状態などの客観的情報を収集します。
在宅看護でのフィジカルアセスメントでは、
緊急性や重症度の高い問題からアセスメントを行うことが重要です。
潜在的な問題を毎回の訪問看護でアセスメントし、
主に客観的情報を収集して悪化の予防や健康増進につなげることが大切です。
- 在宅看護でのフィジカルアセスメントの優先順位
- 緊急事態かどうかをアセスメントする。
- 優先度の高い問題かどうかをアセスメントする。
- 潜在的(悪化の予防や健康増進のための問題)な問題かどうかをアセスメントする。
アセスメントのプロセス
アセスメントを行う時には、
基本情報を聞き取ることが今後の在宅生活上最も大切であることを
患者さんに十分に説明し、患者さんにリラックスしてもらい、安心してもらいます。
価値観や考え方の特徴を、普段の生活の場で具体的にイメージしながら聞き取ることで、
その後の看護介入にとても役に立ちます。
基本情報には、背景情報や主訴、現病歴、既往歴、生活歴、家族歴などがありますが、
身内に聞かれたくないプライバシーの問題もあるので、
話をすることができる環境を整えます。
また、患者さんから話を聞くことだけに頼るのではなく、
看護師自身が落ち着いて安心感を与え、
患者さんが心を開いて応えられるような質問の仕方を身につける事も必要です。
患者さんの意識レベルや年齢などによって、
家族から情報を得る事も必要ですし、患者さんやその家族・介護者から本音で話を聞く事も大切です。
玄関先などでの立ち話から、重要な情報を得ることができることもあります。
- 初回
- 在宅看護の訪問で、初回の訪問の時には、まず、基本情報を聞きながら、
顔の表情や皮膚の状態、体格や姿勢、動作、振る舞い、しゃべり方、服装、臭気などの全身の様子や感じを観察します。
そして、継続的な変化をみていくために、
バイタルサインや身長、体重などの計測を行います。 - 二回目以降 在宅看護の訪問で、二回目以降の訪問の時には、
最も困っている問題を聞きながら、なるべく全身の状態を観察することが大切です。
今、最も困っている問題と直接関係がないと思われる症状や状態も、
後になってから問題に関連する事もあります。
訪問時のアセスメント
- 循環
- バイタルサイン(安静・負荷・臥床・座位)
脈拍
脈性状
体温(発熱・低体温):腋窩ほか - 呼吸
- 呼吸数(安静・負荷・臥床・座位)
呼吸音
呼吸困難
分泌物
動脈血酸素飽和度(SpO2) - 食事
- 内容(分量・満足度・嗜好など)
間食
水分量
食事療法
食べ方
咀嚼・嚥下
口腔の状態 - 睡眠と生活リズム
- 睡眠(熟睡・普通・浅い・不眠)
睡眠薬(有・無)
昼寝
昼夜逆転など
その他の生活リズム - 排泄
- 尿の回数
尿の量
便の回数
便の性状 - 感染症
- MRSAなどの感染症があるかどうか
在宅生活の中でのアセスメントのポイント
まず、基本情報を収集しますが、
その後は、患者さんの状態にあわせたアセスメントを行います。
- 小児の患者さんの場合
- 小児の場合、人工呼吸器などのME機器を自宅で管理しながらの療養生活も多く見られます。
全身状態を観察し、医療機器の安全確認を行い、発達や発育状況も観察します。
同時に、家族・養育者の健康状態や養育状況などの観察をする事も重要です。
- 特定疾患の患者さんの場合
- 特定疾患の患者さんで訪問看護を利用している場合は、
その疾患の特性を考慮し、起こりやすい状況に注意した観察を必要とします。
- 高齢者の患者さんの場合
- 高齢者に多い尿路感染、肺炎、脱水などに注意して観察します。
これらは、観察とケアの方法次第で予防することができます。
家族の介護力や介護方法の確認を行うことがポイントになります。 - 寝たきり患者さんの場合
- 寝たきり患者さんの場合は、褥瘡がある場合も多く、
栄養状態や排泄のケア、状況、環境、介護力の観察が重要です。
その後の看護介入
このようなフィジカルアセスメントを行った後、
看護診断、看護介入へと進みます。
アセスメントによって、看護診断や看護介入内容に変更があった場合は、
患者さんや家族、介護者への説明を十分に行い、変更を納得してもらうことが大切です。
医療の現場が、病院から在宅にシフトしていく今後、
看護師のあり方、看護師の役割もどんどん変化していきます。
看護師のフィジカルアセスメントは、
看護ケアの根拠、効果の測定、評価の目安や指針となる情報を得るための大切な技術です。
ですから、実践から自身の技術向上を目指すことが大切です。
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