看護記録の書き方のキホン

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輸液管理のポイント

(1) IN/OUTのバランスと身体所見

 

●バランスシート

 

水のIN/OUTは、バランスシートで把握します。

 

輸液管理では、補給されている量が適切で、
体液量が一定に保たれているかを評価することが大切です。

 

輸液量が過剰になると電解質のバランスを崩したり、
心臓や腎臓への負荷が大きくなります。

 

逆に、輸液量が少なくなると、
脱水症状を引き起こすこともあります。

 

ですから、投与後も、経過を観察し、評価しながら、
適切な輸液ができるような処方を確認していくことが大切です。

 

この評価で重要になるのが、摂取量(INPUT/体内に入る量)と、
排泄量(OUTPUT/体外に排出される量)のバランスです。

 

INとOUTの確認には、バランスシートを用います。

 

食事と輸液など、体内に入ってくる摂取量をINの項目に記入し、
尿、便、発汗、不感蒸泄などで体外に排出される量を
OUTの項目に記入し、状態を観察し、評価していきます。

 

また、細胞内外の水分量欠乏や、電解質異常を日々のデータから把握するのは難しく、
水分量で変化するNa濃度は、血液データで把握することはできません。

 

ですから、バイタルサインや、身体所見を見ていくことが必要です。

 

●バランスシートの計算式

 

(輸液量 + 経口摂取量 + 代謝水) − (尿量 + 便 + 不感蒸泄 + 排泄液量)

 

●過剰投与と脱水のサイン

 

輸液管理では、心不全の危険性がある過剰投与と、
不足による脱水に注意しなければなりません。

 

ですから、心不全と脱水のサインには、特に注意して観察する必要があります。

 

心不全のサインとしては、血圧の低下、脈拍数の増加、体重の増加、
起座呼吸、30度以上の座位での頸静脈怒張、末梢浮腫などがあります。

 

脱水に関しては、輸液を補給している状況下ではあまりありません。

 

ですが、排泄量が多いなど不足すると脱水になることがあります。

 

脱水のサインは、口渇(口腔粘膜の乾燥)、皮膚ツルゴール反応の低下、
ハンカチーフサイン、急激な体重減少、尿量減少などがあります。

 

腎機能が正常な状態では、尿中のNa値やCl値が40mEq/l以上になると
脱水は改善されたと判断することができます。

 

●利尿薬使用時の注意点

 

利尿薬を使用しているときは、薬剤の種類に注意することが必要です。

 

輸液療法では、体液貯留の改善のために、
利尿薬が用いられます。

 

利尿薬には、ループ利尿薬に代表されるNaと水の再吸収を抑制するものと、
パソプレシン拮抗薬のような自由水の排泄を促すものがあります。

 

浮腫などでは、ループ利尿薬に代表されるNaと水の再吸収を抑制するものが
第一選択になりますが、
心不全では、低Na血症が促進されることがあります。

 

その場合は、水利尿作用が強いパソプレシン拮抗薬のような自由水の排泄を促すもの、
トルパプタン(サムスカ?)が用いられます。
トルパプタンは、中等度の腎機能低下でも選択させる薬剤ですから、
その作用機序を覚えておくと良いでしょう。

 

トルパプタン投与時は、急激な血清Na値の上昇、
口渇など副作用を呈することがあります。
尿中の電解質濃度(NaおよびK)の観察が必要です。

 

☆IN/OUTのバランスと身体所見のポイント

 

輸液管理では、補液によって
体液バランスが適切に保たれたかどうかを評価することが大切です。

 

バイタルサインや身体所見、検査値データから
過剰症状、欠乏症状のサインを見極めることが必要です。

 

(2) 輸液療法で特に注意が必要な場合

 

●新生児・小児

 

体液量が多い新生児や小児に輸液療法をするときは、
特に注意が必要です。

 

小児の場合、体重に占める体液の割合が新生児では80%、
1歳児で65%というように成人に比べて大きいのが特徴です。

 

特に、細胞外液の割合が高く、
新生児では、細胞内液が35%、細胞外液が45%を占めています。

 

また、Na代謝率や尿濃縮能、希釈能などが十分に発達していないので、
1日に必要な水分と塩分が多く、水負荷で浮腫を起こしやすいです。

 

また、腎臓での水分の再吸収が不十分なので、
脱水になりやすいという特徴もあります。

 

さらに、水分代謝が成人の3倍と早いので、
短時間でも水分摂取ができないと、その影響が出やすくなります。

 

小児に輸液を行う時には、
状態を観察しながら投与量を細かく確認していくことが大切です。

 

1日の投与量の目安は150〜200ml/kg/日、
軽度〜中等度の脱水では、経口補液剤を併用します。

 

特に乳児は、細胞外液の2分の1に相当する100ml/kgが1日の水分摂取量にあたるので、
脱水は深刻となります。

 

ショック時などでの急速大量投与の場合は、
高血糖による浸透圧利尿や腎性腎不全への移行を考慮し、
糖質もKも含まない生理食塩水を用います。

 

●高齢者

 

体液量が少ない高齢者に輸液療法を行う時にも注意が必要です。

 

高齢者の場合、細胞内液の比率が低下し、
体重に占める体液の割合が55%に減少し、
不感蒸泄量も成人の3分の2〜2分の1に低下します。

 

水・電解質異常も起こしやすく、
細胞内の脱水になりやすいです。

 

さらに、心機能や腎機能をはじめとした様々な機能が低下していますから、
水・電解質・酸に対しての許容量が低下します。
そして、症状の出現が明白でないので、
重篤な症状に陥りやすく、
一度状態が悪化すると回復が難しくなります。

 

高齢者への輸液療法は、このような身体的特徴だけでなく、
個人差が大きいこと、
多臓器障害を起こしやすいこと、
糖質・脂質の代謝能力や免疫凝固機能が低下していることを念頭におき、
慎重に実施することが必要です。

 

特に、腎疾患患者や、透析患者など、
腎機能が障害されている場合は、糖代謝の問題や水分制限などで、
一般的な投与量とは違ってくるので十分な注意が必要です。

 

また、高血糖や脂質異常症を起こしやすく、
大量に投与すると心不全や肺水腫などに陥りやすくなるので
注意が必要です。

 

☆小児や高齢者への輸液療法のポイント

 

体液量の割合が成人に比べて高い小児も、低い高齢者も、
輸液の許容範囲が狭いところが共通しています。
こまめな処方とチェック、観察で、より慎重に輸液を行う事が必要です。

 

(3) 投与に関する注意点

 

●投与量と投与速度

 

維持輸液では、中心静脈を用いる場合は100ml/時間を
24時間かけて連続投与します。

 

末梢静脈から行う場合には、
通常500mlを2時間かけて投与するのが基本です。

 

欠乏輸液は、安全係数を掛けた量を投与しますが、
病態によってはまず急速投与を行い、
改善が見られたら輸液速度を落とします。

 

脱水の補正であれば、
尿量500〜1000ml/日、または0.5〜1ml/kg/時間を改善の目安とします。

 

ですが、高度の脱水や出血性ショックなどの時は、
初期輸液として大量の生理食塩液を急速投与します。

 

このとき、Kが含まれている輸液製剤を急速静注(ワンショット)すると高K血症になり、
心不全を起こしてしまうリスクが高くなるので
注意しなければなりません。

 

輸液速度については、15滴/mlの輸液セットで、
xml/時間の輸液を行いたい場合
「x/60×15=x/4滴/分」と置き換えられます。

 

xを4で割ると、1分間の滴数を求めることができ、
1分間の滴数に4を掛けると点滴速度をもとめることができます。

 

<水・電解質の最大投与速度>

 

水: 500ml/時間
Na: 100mEq/時間
HCO3: 100mEq/時間
K: 20mEq/時間  
Ca: 20mEq/時間
Mg: 20mEq/時間
NH4: 20mEq/時間

 

●配合変化と配合禁忌

 

配合禁忌の殆どは、塩基性に関係するものです。

 

輸液製剤の多くは酸性に傾いているので、
アルカリ性の薬剤との混合は避けます。

 

CaやMgなどを含む薬剤と、
リン酸塩や炭酸塩を含む薬剤を混合する場合は、
沈殿や混濁、着色などの外観変化がおきるので、
このような薬剤を側管から投与するときには注意が必要です。

 

配合変化が起こる組み合わせは、
とてもたくさんあります。

 

日常の現場でよく使われる薬剤についての情報をまとめておくと良いでしょう。

 

配合変化を起こした薬剤は、期待する効果が得られないこともありますし、
場合によっては悪影響を及ぼすことがありますから使用を中止します。

 

このほかにも、作用が激弱する配合は、
ビタミンB1、イソニアジド、ヒドララジン、L-ドパなどがあります。

 

☆配合変化と配合禁忌のポイント

 

輸液製剤投与やルート確保下で生じる合併症、
投与時の配合変化などに細心の注意を払うことによって、
より安全な輸液治療を行う事ができます。

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