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腎疾患(腎不全)の時の輸液管理

腎臓の働き

 

(1) 尿などの代謝産物を排泄
(2) 細胞外液量や浸透圧を調節
(3) 水・電解質代謝の平衡を維持
(4) 酸・塩基平衡を調節
(5) ホルモンを生成する(内分泌機能)

 

腎臓は、このような働きを担い、体内の恒常性を維持しています。

 

特に、尿排泄は、水や電解質のバランスを保つために重要な働きです。

 

腎不全とは

 

腎不全は、腎臓が何らかの障害を受けたことにより、
本来の機能を果たせなくなった状態をいいます。

 

腎不全には、「急性腎不全」と「慢性腎不全(CKD)」があります。

 

腎不全の分類

 

・急性腎不全

 

腎後性腎不全: 腎後性腎不全は、尿路の閉塞などの腎臓から出た後の問題で生じます。

 

腎前性腎不全: 腎前性腎不全は、ショックや重度の脱水など、腎臓に入る前に問題が起こり、
       腎血流量が急激に低下することにより無尿になります。

 

腎性腎不全: 腎性腎不全は、腎疾患の急速な進行や、解毒性物質による尿細管の障害、
      アレルギーが原因の間質障害などによって、腎臓自体に問題が起こります。

 

・慢性腎不全

 

保存期腎不全: 保存期腎不全は、CKD分類ステージ3〜5で、
       腎機能が中等度に低下した状態です。
        自覚症状として、夜間頻尿、血圧上昇、貧血などの症状が現れ始め、
       尿毒症症状へと移行します。
       やがて、腎性貧血などの合併症も出現すると、透析の導入を進めていきます。

 

透析期腎不全: CKD分類ステージ5Dで、乏尿、或いは無尿の状態で、
       透析による調節が重要な状態です。
       Na(+水)の過剰による体液過剰、高カリウム血症、
       代謝性アシドーシスなど、水・電解質異常が起こりやすくなります。

 

腎疾患(腎不全)の時の輸液管理のポイント

 

腎疾患(腎不全)の時の輸液管理では、INとOUTのバランスに注目しなければなりません。
バランスが取れているときには輸液は不要です。

 

経口摂取量が減少していたり、電解質異常が起きている場合は、
尿排泄の調節機能の欠如+尿以外の体液が喪失してしまうので、
輸液が適応になります。

 

体重は、体液量を反映していますから、
毎日体重をチェックし、変化に注意します。

 

腎疾患(腎不全)の時に使用する主な輸液製剤と治療薬

 

腎疾患(腎不全)の時の時に使用する主な輸液製剤は、
等張液(細胞外液補充液/生理食塩水)、
低張液(1号液、4号液)、水分輸液製剤(5%ブドウ糖液)、
利尿薬などです。

 

慢性腎不全の特徴

 

・保存期腎不全

 

保存期腎不全では、ナトリウム(Na)や自由水の排泄障害が現れ、
塩分排泄が低下します。

 

そのため、体内に塩分がたまりやすくなります。

 

すると、飲水行為を引き起こし、
結果として体液過剰になりやすくなります。

 

ただし尿量の低下のみで、体液バランスが崩れることはありません。

 

しかし、水や電解質の負荷量が急激に変化すると、
反応が遅れがちになるので注意しなければなりません。

 

例えば、腎機能が正常であれば、絶食によるNa摂取がなくなっても、
Na排泄による喪失を最小限にとどめる働きが作用しますが、」
腎不全になるとNa排泄の調節が遅れ、
喪失が増加し、体液量の減少が起きてしまう危険性があります。

 

・透析期腎不全

 

透析期腎不全では、尿量が少ない、または無尿となり、
便や不感蒸泄からの排泄だけでは、体液調節が難しくなります。

 

さらに、消化管異常や血管内脱水に伴う便秘、
皮膚異常による発汗の低下が起こる事も多く、
透析による調節が不可欠です。

 

透析に不都合が起きれば、すぐNa(+水)過剰による体液過剰、
高ナトリウム血症、代謝性アシドーシスなどが起こります。

 

保存期腎不全の輸液療法の目的

 

保存期腎不全の場合、普通に飲水ができれば輸液は必要ありません。

 

ですが、下痢や発熱、嘔吐などによって体液喪失があった場合や、
経口摂取が低下している場合は、
状態を観察し、必要に応じて体液の補充を目的とした
輸液治療を行うのが必要になるため、維持輸液などを行います。

 

また、脱水に伴う急性腎不全を発症した場合は、
血圧低下や重篤な状態に陥りやすくなるので、
細胞外液補充液による補充を行わなければなりません。

 

保存期腎不全の輸液療法で使用する輸液製剤

 

保存期腎不全では、状況に応じて欠乏輸液、維持輸液を行います。

 

・体液が喪失した場合

 

体液が喪失した場合は、生理食塩液と5%ブドウ糖液の組み合わせによる
維持輸液を行います。

 

・脱水(血圧低下)の場合

 

脱水(血圧低下)の場合は、等張液(生理食塩液)、等張に近い低張液(1号液)を行います。

 

低ナトリウム血症、高カリウム血症、代謝性アシドーシス、
代謝性アルカローシスを引き起こさないようにするため、
低張の輸液、カリウム(K)を含む輸液、酸・アルカリ製剤は控えます。

 

Kやカルシウム(Ca)を含む乳酸リンゲル液には注意します。

 

透析期腎不全の輸液療法の目的

 

透析期腎不全の場合、INとOUTのバランスが取れていれば、
輸液を行う必要はありません。

 

ですが、低下した尿の量以上に、食事量や飲水量が低下している、
或いは、下痢や嘔吐、発熱など異常な体液の喪失があった場合は、
輸液を投与しなければなりません。

 

透析を受けている患者さんは、食事や水などの摂取(IN)の制限と同時に、
尿や便などの排泄(OUT)を維持、亢進させることが大切です。

 

そのため、今残っている腎機能の維持や便秘の解消を図ることや、
尿から水、電解質排泄を亢進させる利尿薬を使用します。

 

ただし、尿量が増えなければ、利尿薬の使用は控えます。

 

透析期腎不全に使用する輸液製剤

 

透析期腎不全では、INとOUTのバランスが崩れた時に
輸液を実施します。

 

・無尿で経口摂取がない場合

 

無尿で経口摂取がない場合は、5%ブドウ糖液、4号液の維持輸液をします。

 

・無尿で少しでも飲水がある、または循環血液量が少なめの場合

 

無尿で少しでも飲水がある、または循環血液量が少なめの場合は、
1号液で維持輸液をします。

 

・脱水(血圧が低下)の場合

 

脱水(血圧が低下)の場合は、生理食塩水、1号液の欠乏輸液を行います。

 

・静脈ルート確保が目的の場合

 

静脈ルート確保が目的の場合は、Kが含まれない輸液製剤を使用します。
心不全がなければ、輸液製剤の種類は選びません。

 

急性腎不全に対する輸液療法

 

急性腎不全の場合の初期輸液は、まず、循環血液量を評価します。

 

そして、循環血液量が不足しているようであれば、
細胞外液を補充します。

 

その際、Kが高い、或いは正常であれば、
Kが含まれていない生理食塩液を選択します。

 

不足していなければ、維持輸液を選択します。

 

同時に、腎前性、腎性、腎後性の別を鑑別し、
原因にあわせた対応や治療を行っていきます。

 

腎不全の体液コントロール

 

腎不全の体液コントロールには、体重がポイントです。

 

慢性腎不全の患者さんの体液バランスを見ていくときには、
体重のチェックがとても大切です。

 

体重が低下したということは、体液量が減っていることを現します。

 

あらかじめ体液量の減少が予測できる時は、
それを見越して輸液投与を開始する場合はありますが、
体重をチェックしながら輸液療法を行うのが一般的であり、原則です。

 

体重を量ることができない患者さんに対しては、
血圧や身体所見を参考にします。

 

透析期腎不全の患者さんに対しては、
ドライウエイト(透析後の体重)が維持されるように、
輸液量を増減することが必要です。

 

毎朝、体重測定を行い、
ドライウエイトが維持される程度に輸液量を調節します。

 

入院患者さんの場合は、臥床や運動量が減ることによって、
筋肉や脂肪の量が落ちる事も多いです。

 

その場合、ドライウエイトも低下することが予想されます。

 

常に、血圧、心胸比(胸部X線で胸郭(胸)で最も幅の広い部分と、
心陰影(心臓)の最も幅のある部分の長さの比)、
浮腫などの指標を判断し、ドライウエイトを再検討することが重要です。

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