看護記録の書き方のキホン

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周術期の輸液管理

周術期の病態

 

周術期は、手術による侵襲はもちろんですが、
その前後で色々な特異的環境・状態におかれることにより、
体液バランスに異常が生じます。

 

この体液バランスが崩れる原因は、大きく分けると4つあります。

 

・周術期に起こる体液バランス異常の原因

 

(1) 術前・術後の食事摂取量低下

 

手術のための絶食や手術による痛みや生活制限、
精神的動揺などによって食事が制限されたり、食欲が低下したりします。

 

(2) 術中・術後の体液喪失

 

出血、切開・滲出による体液の喪失、
皮膚・呼気・開放創などからの蒸散などによって体液が失われます。

 

術中・術後の体液喪失に関しては、総体的にあまり多い量ではありません。

 

(3) 手術侵襲・痛み・ストレス・抗利尿ホルモン分泌亢進

 

手術侵襲、炎症や痛みなどの強いストレスは、
抗利尿ホルモン(ADH)に対する強い分泌刺激になり、
ADHが過剰に分泌されます。

 

ADHは、腎臓での尿の再吸収を促し、尿量を減らす働きがあります。

 

(4) 麻酔・手術侵襲・炎症によるサードスペースの出現

 

麻酔・手術侵襲・炎症などが原因となり、
他の部位との交通が遮断された非機能的なサードスペースが発生します。

 

そこに移動することで細胞外液が減少します。

 

周術期の輸液ポイント

 

周術期の輸液は、発生する体液バランス異常を理解し、
対応処置として体液の補正を図ること、
4つの主原因を検証し、原因に応じて輸液製剤を選択すること、
頻度が高く体格が小さいと重症化するので、
周術期の低ナトリウム血症に注意することなどがポイントになります。

 

周術期の輸液の目的

 

周術期の輸液は、循環血液量を維持し、各臓器の血流を保ち、
血行動態を安定させることを目的として行いますが、
手術を安全に行うため、
そして、手術を成功させるためにとても重要です。

 

術前、術中、術後の目的は以下の通りです。

 

・術前の輸液の目的

 

(1) 絶飲食による脱水を補正する。
(2) 栄養不良な場合に対して可能な限り改善を図る。

 

・術中の輸液の目的

 

(1) 恒常性を維持する(循環動態を安定させる)。
(2) 絶飲食による欠乏を補う。
(3) 体液の喪失を補う。
(4) 麻酔による血管拡張分を補う。

 

・術後の輸液の目的

 

(1) 手術による体液喪失を補う。
(2) 麻酔による血管拡張分を補う。
(3) サードスペースへの移動分を補う。
(4) 出血量を補充する。
(5) 体内の恒常性を維持する。
(6) 絶飲食による欠乏を補う。

 

周術期の輸液に使用する製剤

 

周術期輸液に使用する主な輸液製剤は、
等張期(細胞外液補充液/生理食塩液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液)、
低張液(1号液、3号液)、水分輸液製剤(5%ブドウ糖液)などです。

 

 

周術期のそれぞれの時期に使用する輸液製剤

 

周術期に使用される輸液製剤は、主に等張液、水分輸液製剤などですが、
それぞれの時期によって用いる薬剤が異なります。

 

・術前に使用する輸液製剤とは

 

脱水に対しては、乳酸リンゲル液や酢酸リンゲル液などの等張液、
或いは5%ブドウ糖液、または3号液です。

 

栄養が不良の場合は、状態に即した栄養輸液製剤を用います。

 

・術中に使用する輸液製剤とは

 

蒸散に対しては5%ブドウ糖液を用います。

 

出血には、等張液、及び輸血(等張液で補充する場合は、出血量の2〜3倍)を用います。

 

その他の滲出液補充には、乳酸リンゲル液や酢酸リンゲル液などの等張液、
高ナトリウム血症に対しては5%ブドウ糖液を用います。

 

・術後に使用する輸液製剤とは

 

出血、サードスペースへの移行分、麻酔による血管拡張分などの補充には、
乳酸リンゲル液や酢酸リンゲル液などの等張液を用います。

 

維持輸液としては、5%ブドウ糖液、或いは等張液を用います。

 

サードスペースで注意すべきこと

 

サードスペースでは、細胞外液が「減るとき」よりも「戻るとき」に注意が必要です。

 

手術侵襲や大量の輸液などによって、血管内の水分が血管外へ漏れ出すことを
サードスペースといいます。

 

このサードスペースが出現すると、細胞外液が減少し、体液のバランスが崩れてしまいます。

 

そして、その細胞外液が血管内に戻る時にも、体液のバランスへの影響が生じます。

 

循環血漿量は増え、結果、尿の量も増えます。

 

ですから、同じ量・組成のままで輸液を漫然と続けると、
輸液過剰による心不全に繋がる可能性があるので注意しなければなりません。

 

・術後の患者さんは低ナトリウム血症に気をつける

 

術後の患者さんは低ナトリウム血症になる危険性が高いです。

 

周術期の患者さんは、手術侵襲・痛み・ストレスによってADHの分泌が亢進され、
過剰な状態になっています。

 

さらに、入院中に使用される薬剤には、ADH分泌を促す作用のあるものが多いです。

 

このようなことから、ADHが過剰になると、尿の張度が上昇し、
一方で、周術期には、失われた体液を補充するための大量の低張液が投与されます。

 

そのため、体内のNaに対し、分量が過多になってしまうので、
低ナトリウム血症に繋がります。

 

低ナトリウム血症になる頻度は高いので注意しなければなりません。

 

低ナトリウム血症になると、頭痛、錯乱、昏迷などの症状がみられますし、
小さな子供や高齢者、体格の小さな患者さんでは、
重度の脳神経障害を起こす危険性があります。

 

低ナトリウム血症に対しては、等張期、または1号液の投与を行います。

 

高度の低ナトリウム血症では、高張食塩水などによる治療を行います。

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