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ショックの時の輸液管理

ショックとは

 

ショックとは、何らかの原因によって、
急激に全身の循環に障害が起こり、
末梢組織に対して需要に見合う酸素が供給できなくなった状態をいいます。

 

この状態が継続すると、需要臓器や細胞の機能が維持できなくなります。

 

速やかに治療しなければ、命に関わることがあります。

 

ショックの時の輸液管理のポイント

 

初期輸液として細胞外液補充液を急速投与→緊急処置として血圧の上昇を図ります。

 

迅速な原因鑑別が重要→ショックの種類によって治療方法が異なります。

 

心原性ショックの場合の急速投与は禁忌→心不全の危険性があります。

 

ショックの時に使用する主な輸液製剤・治療薬

 

ショックの時に使用する主な輸液製剤・治療薬は、
等張液(細胞外液補充液/生理食塩液、乳酸リンゲル液)、
血管収縮薬(カテコラミン/ドバミン、アドレナリン、ノルアドレナリン)などです。

 

ショックの分類と原因

 

(1) 血液分布異常性ショック

 

血液分布異常性ショックは、副交感神経が優位になり、
末梢血管の抵抗が低下して過剰に膨張、
末梢血管に血液が貯留することで、血圧が維持できなくなる状態です。

 

血液分布異常性ショックの主な原因は、
感染性ショック、アナフィラキシーショック、神経原性ショックなどです。

 

(2) 循環血液量減少性ショック

 

循環血液量減少性ショックは、循環血液量が減少し、
心臓への静脈還流量(前負荷)が急速に低下し、
心拍数が減少して起こるものです。

 

臨床では、最も多くみられるショックです。

 

循環血液量減少性ショックの主な原因は、
外傷や吐血、参加領域に伴う出血による出血性ショックや、
熱中症、脱水、高齢者の低栄養による体液喪失などがあります。

 

(3) 心原性ショック

 

心原性ショックは、心臓のポンプ機能が低下、または不全となり、
心拍出量が減り、そのため血圧が下がる状態です。

 

心原性ショックの原因としては、心筋梗塞や拡張型心筋症による心筋症、
僧帽弁閉鎖不全や心室瘤、心室中隔欠損、大動脈弁狭窄症による機械性なもの、
不整脈などがあります。

 

(4) 心外閉塞・拘束性ショック

 

心外閉塞・拘束性ショックは、
心臓自体に障害はないが、外部からの要因によって
心臓のポンプ機能が障害され、
心拍出量が低下して起こります。

 

心外閉塞・拘束性ショックの主な原因は、
心タンポナーデ、収縮性心膜炎、広範囲肺塞栓症、緊張性気胸などがあります。

初期輸液の基本

(1) 初期輸液の目的

 

ショックに対する輸液療法は、その種類によって異なりますから、
まず、鑑別に行い、その結果に応じた療法を選択することが必要です。

 

ですが、対応には緊急性が求められ、
鑑別に時間をとられてしまうと、低血圧状態を遷延させてしまうリスクが生じます。

 

そこで、まず、初期輸液を行い、血圧を上昇させます。

 

初期輸液を進めながら、同時にショックの病態を鑑別し、
原因疾患に対する治療を行います。

 

一般的に輸液は補助療法であることが少なくありませんが、
ショックの病態においては、本格的、かつ重要な治療になります。

 

(2) 使用する輸液製剤

 

ショックの初期輸液に使用するのは、細胞外液補充液です。

 

ショックによって血圧が低下している場合、
細胞外液が不足し、循環血液量が減少している状態になっています。

 

ですから、Na(ナトリウム)を含む細胞外液補充液を投与し、
血管内の水分量を増やす必要があります。

 

最優先にするのは、血管内の循環量を増やし、血圧を保つことです。

 

細胞外液補充液として用いられるのは、
生理食塩液、乳酸リンゲル液を選択するのが一般的です。

 

(3) 処置の流れ

 

初期輸液をするときには、まず18Gの留置針で、
末梢の静脈ラインを2本確保します。

 

このラインは、初期輸液とともに、
昇圧薬やそのほかの治療薬、輸血などのルートになります。

 

この静脈ラインから、細胞外液補充液を急速投与します。

 

ただし、既往歴や搬送時の情報などから、
事前に心不全による心原性ショックが強く疑われる場合は、
急速輸液は禁忌となります。

 

また、収縮期血圧が60mmHgを下回るような重篤なショック状態の場合は、
カテコラミン(ドバミン、ノルアドレナリン)などの
血管収縮薬を用いて昇圧をします。

病態に応じた輸液と治療

(1) 血液分布異常性ショック

 

血液分布異常性ショックでは、徐脈と血管拡張が主な病態です。

 

ですから、まず、細胞外液補充液を急速輸液し、
心室への血流量(前負荷)減少を補正します。

 

徐脈と末梢血管拡張によるショックに対しては、
血管収縮薬であるアドレナリンを筋肉注射、或いは静脈投与し、
心拍数を上げて、末梢血管を収縮させます。

 

このとき、ノルアドレナリンを併用する場合もあります。

 

そして、同時に根本治療をすすめていきます。

 

例えば、アナフィラキシーショックの場合、
造影剤や抗菌薬に対するアレルギー反応であれば、
投与を中止し、ルートを取り換えます。

 

アドレナリン(皮下注射)は、
昇圧のみではなく、気管支拡張や浮腫改善にも使用されます。

 

コハク酸ヒドロコルチゾンを、症状によって点滴静注したり、
アミノフィリン、抗ヒスタミン薬、H2ブロッカーを投与することもあります。

 

(2) 循環血液量減少性ショック

 

循環血液量減少性ショックのときは、
細胞外液補充液を大量投与して、血圧を上昇させます。

 

外傷や吐血などによる出血性ショックでは、
出血量により輸血を行います。

 

そして、同時に根本治療を進めていきます。

 

出血性ショックの場合は、出血源を特定し、
早急に止血操作を実施します。

 

外傷であれば手術による止血をし、
消化管などからの出血であれば内視鏡手術をします。

 

産科領域なら子宮全摘術や塞栓術などを行います。

 

循環血液量減少性ショックで、大量の輸液を続けると、
血液凝固異常や低体温、代謝性アシドーシスなどの
合併症を生じる危険性があるので、止血を急ぐ必要があります。

 

(3) 心原性ショック

 

心原性ショックは、他のショックとは異なります。

 

そして、輸液の目的は、適正な前負荷の維持になります。

 

心原性ショックの場合は、心機能の障害により心拍出量が減少したことで、
臓器や組織に必要十分量の血液が還流しない状態になっているので、
早急にこの状態を改善することが必要になります。

 

ですから、輸液はライン確保のために行うと考え、
5%ブドウ糖液をゆっくり投与していきます。

 

心臓への負荷を避けるために、細胞外液補充液の急速投与は行いません。

 

その上で、ドパミンやドプタミンなどの強心薬や、
ノルアドレナリンなどの血管収縮薬の投与をなるべく早く開始します。

 

障害の原因によっては、血栓で詰まった血管を開通させるための
血管拡張術や、心臓手術を行う事があります。

 

(4) 心外閉塞・拘束性ショック

 

心外閉塞・拘束性ショックの場合は、
細胞外液補充液を急速投与して血圧を上昇させ、
同時に血管収縮薬を投与します。

 

その後、根本治療をすすめていきますが、
肺塞栓症や心タンポナーデ、緊張性気胸などといった
原因によって処置が変わってきます。

 

肺塞栓症を疑う場合は、Dダイマーを測定します。
造影CTで肺動脈の血栓を確認したら、t-PA製剤を投与します。

 

また、カテーテル治療(血栓吸引やステント留置)を行う場合もあります。

病態・疾患別の輸液管理のポイント

初期輸液はルート確保の役割も担う

 

ショックに対する初期輸液は、血圧を上昇させるとともに、
ルート確保の役割も担っています。

 

そのため、なるべく太い末梢静脈を2本確保することが必要です。

 

まずは、上腕内側の橈側皮静脈か尺側静脈の太い血管のいずれかに
一本目のルートを確保し、
その一本目のルートから輸液を行いながら、2本目を確保します。

 

シャント側、骨折側、麻痺側、下肢の静脈でのルート確保は
行わないのが原則です。

 

輸液製剤は温めて投与

 

輸液製剤は、熱中症の患者さんを除いて、
体温低下を防ぐために、あらかじめ39℃前後に温めたものを使用します。

 

例えば、出血性ショックを起こしている場合、
37℃前後の血液が失われているので、
そこに冷たい輸液が大量に投与されると、
体内を巡る血液の温度は37℃よりも下がり、
体温を引き下げることになってしまいます。

 

特に、重症外傷の場合は、低体温は、
アシドーシスや凝固異常と並んで「致死的3徴」といわれています。

 

予後を不良にする重要な因子となってしまいますから、
熱中症の患者さん以外には、輸液製剤は温めて使うようにします。

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