看護記録の書き方のキホン

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悪心・嘔吐

患者さんに悪心や嘔吐がみられるときには、
症状の原因となっていることを確認します。

 

・がん化学療法を行っている
・放射線療法を行っている
・催吐性のリスクの高い抗がん剤を使用している
・がんの進行による消化管機能低下がある
・病気が進んでいる
・鎮痛薬や抗生物質、気管支拡張薬などを使用している
・不安感が強い
・つわりや乗り物酔いなど、強い吐き気の体験がある

 

このようなことが、悪心や嘔吐の原因となります。
悪心や嘔吐を訴える患者さんに当てはまる部分をチェックします。

 

悪心は、主観的な感覚です。
ですから、不快の度合いや症状の現れ方には個人差があります。

 

がん化学療法による悪心・嘔吐は一般的に高齢者よりも50歳未満の若年層に出現しやすい傾向にありますし、
男性よりも女性に出現しやすい傾向があります。
とくに、妊娠時につわりの経験がある人や乗り物酔いをしやすい人に強い症状が出現することが多いです。

 

そして、がん化学療法の悪心・嘔吐は、出現の時期や持続時間、要因によって、
「急性悪心・嘔吐」、「遅発性悪心・嘔吐」、「予期性悪心・嘔吐」の3つに分類されています。

 

放射線治療の場合は照射部位と範囲で、
がん化学療法では抗がん剤の種類や投与量、組み合わせなどによって
悪心・嘔吐の症状の出現率が異なります。

抗がん剤の催吐性リスク

患者さんが悪心や嘔吐の症状を訴えている場合、
まずは、患者さんが使っている抗がん剤の催吐性リスクを知っておくことが大切です。

 

日本癌治療学会や海外のガイドラインで、
高度(催吐頻度90%以上)、中等度(催吐頻度30〜90%)、低度(催吐頻度10〜30%)、
最小度(催吐頻度10%以下)というように、催吐リスクが分類されています。

 

抗がん剤の組み合わせや投与量、治療回数が異なることによって、
催吐は高くなります。

 

がん化学療法では、催吐リスクに沿って制吐薬を使用します。

 

日本癌治療学会の「制吐薬適正使用ガイドライン」によって、
各催吐性リスク別に制吐薬を使い分けるように提示されていますから、
まずは、患者さんが使っている抗がん剤の催吐リスクを知り、
そして、患者さんがどの制吐薬を使用しているかを確認しておきます。

放射線治療の催吐性リスクの分類

射線治療の高度催吐性リスク 
 → 催吐頻度 > 90% : 放射線照射部位は、全身照射

 

放射線治療の中等度催吐性リスク 
 → 催吐頻度 60〜90% : 放射線照射部位は、上腹部

 

放射線治療の軽度催吐性リスク 
 → 催吐頻度 30〜59% : 放射線照射部位は、胸部下部、骨盤、頭蓋(radiosurgery)、頭蓋脊髄

 

放射線治療の最小度催吐性リスク 
 → 催吐頻度 < 30% : 放射線照射部位は、頭蓋部、四肢、頭蓋、乳房

悪心・嘔吐の出現の仕方と制吐薬の使い分け

急性悪心・嘔吐: 急性悪心・嘔吐は、抗がん剤の投与開始から24時間以内に、悪心・嘔吐の症状が出現します。

 

 高度リスク→ NK1受容体拮抗薬と、5HT3受容体拮抗薬及びデキサメタゾンを併用します。
 中等度リスク→ 5HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンを併用します。
         特定の抗がん剤投与時には、NK1受容体拮抗薬を追加で併用します。
 軽度リスク→ デキサメタゾンを単剤投与し、状況に応じてプロクロルペラジン、またはメトクロプラミドを使用します。
 最小度リスク→ 制吐薬は、基本的に不要です。

 

遅発性悪心・嘔吐: 遅発性悪心・嘔吐は、抗がん剤投与開始後24時間以降から始まり、2〜5日ほど続きます。
          急性悪心・嘔吐を経験した人に出現しやすいといわれています。

 

 高度リスク→ NK1受容体拮抗薬とデキサメタゾンを併用します。
 中等度リスク→ デキサメタゾンを単独で使用し、症状に応じてNK1受容体拮抗薬とデキサメタゾンを併用します。   
         または、5HT3受容体拮抗薬、NK1受容体拮抗薬を単独で使用します。

 

予期性悪心・嘔吐: 予期性悪心・嘔吐は、抗がん剤の治療が開始される前から悪心・嘔吐の症状が出現します。
          前回の治療によって出現した悪心・嘔吐の経験による不安から起きるといわれ、
          病院や点滴を目にしたり、アルコール消毒薬の臭いなど悪心・嘔吐の経験に関連される刺激が条件で反応します。

 

 → ベンゾジアゼピン系抗不安薬が有効です。

患者さんの状態を確認

悪心・嘔吐の症状は、がん化学療法や放射線療法の副作用によって起こりますが、
それだけでなく、がんの進行による腹膜炎や消化管運動の機能低下、腸閉塞などによっても起こります。

 

また、腹水や胸水、浮腫などがあると抗がん剤の排泄が遅れるので、
悪心・嘔吐の症状が遅延する可能性があります。

 

このようなことから、患者さんの病態を確認し、
腹水や肝腫大、腹膜播種、がんの浸潤や転移の有無などがあるかないかを確認することが必要です。

 

さらに、電解質のバランスが崩れることによっても悪心・嘔吐の症状は出現します。
電解質などの検査データや下痢、脱水傾向に注意します。

 

抗がん剤以外で悪心・嘔吐の症状がでやすい薬剤の使用をしていないかどうかも確認します。
例えば、オピオイド、ジキタリス、抗生物質、NSAIDs、テオフィリンなどの薬剤や、
降圧剤による血圧の変動なども悪心・嘔吐の原因になることがありますから、
患者さんが使用している薬について、確認することが必要です。

悪心・嘔吐が出現しやすい抗がん剤の例

アルキル化薬: シクロホスファミド水和物、イホスファミド、メルファラン、ダカルバジン、プロカルパジン塩酸塩
代謝拮抗薬: メトトレキサート、フルオロウラシル、S-1、カペシタビン、シラタビン、L-アスパラギナーゼ
抗生物質: ドキソルビシン塩酸塩、イダルビシン塩酸塩、ダウノルビシン塩酸塩、エピルビシン塩酸塩
その他: シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、イリノテカン塩酸塩水和物

 

このうち、シクロホスファミド水和物、ダカルパジン、シスプラチンは高度リスクの薬剤です。
ドキソルビシン塩酸塩、エピルビシン塩酸塩は、シクロホスファミドとの組み合わせで高度リスクとなる薬剤です。

悪心・嘔吐の評価スケール(CTCAE)

悪心: 
Grade1 摂食習慣に影響のない食欲低下
Grade2 顕著な体重減少、脱水、または栄養失調を伴わない経口摂取量の減少
Grade3 カロリーや水分の経口摂取が不十分(経管栄養・TPN・入院を必要とするレベルです)

 

嘔吐: 
Grade1 24時間に1-2エピソードの嘔吐(5分以上間隔が開いたものをそれぞれ1エピソードとする)
Grade2 24時間に3-5エピソードの嘔吐(5分以上間隔が開いたものをそれぞれ1エピソードとする)
Grade3 24時間に6エピソード以上の嘔吐(5分以上間隔が開いたものをそれぞれ1エピソードとする):TPNまたは入院を必要とするレベルです。
Grade4 生命を脅かすレベルです。緊急処置を必要とします。
Grade5 死亡

患者さんの精神面の観察

がん化学療法を受ける患者さんが、自分の病気や治療について
どのように受け止めているかを知ることは、看護師の大切な役割です。

 

治療に伴う仕事や生活上の不安、経済的な不安などがあるかどうか、
患者さんがどのようなことに不安を感じているのかをアセスメントします。
様々なことに対する不安は、悪心や嘔吐の症状につながります。

 

患者さんの訴えに十分耳を傾け、
ストレス発散の方法や問題の解決方法について、患者さんと一緒に考えてます。

客観的な評価と本人の訴えの両方で評価

悪心、嘔吐は、米国NCIの有害事象共通用語基準(CTCAE)を利用して評価します。

 

悪心については主観的なものなので、程度には個人差があります。
例えば、催吐性リスクが低度、または最小度であっても、
悪心・嘔吐の症状を訴える患者さんもいるので、患者さんの訴えを重視して対処することが大切です。

 

患者さんの訴えから、悪心・嘔吐の程度や症状が持続している時間を把握し、
制吐薬の効果を見極めます。

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