体位変換は2時間ごとに行うと褥瘡を予防できるか
体位変換に関しては「最低2時間ごと」と言う大まかなルールがありますが、
2時間ごとにこだわらず、患者さんの状況に応じて個々に設定することが重要です。
とくに低栄養の患者さんや、骨突出が高度な患者さんに対しては、
2時間ごとの体位変換で褥瘡が予防できると考えてしまうのはとても危険です。
「2時間」と言うのは、あくまでも最低でも行いたいという目安だと捉え、患者さんそれぞれの状況に応じてケアします。
ガイドラインの推奨
褥瘡を予防するために、2時間ごとの体位変換が必要だといわれているのは、
皮膚に2時間、70〜100mmHgの圧が加わることにより皮膚と皮下組織に損傷が現れるという報告があり、
それが根拠となっています。
米国創傷オストミー失禁ケア専門ナース協会による「褥瘡の予防と管理のガイドライン」を見ても、
減圧効果の無いマットレスを使用する場合には、最低2時間ごとに体位変換を行うことが推奨されています。
ですが、この「最低2時間ごとに体位変換を行う」と言う指針のエビデンスはBランクで、
2時間ごとに体位変換を行うことで褥瘡を予防できると保証されているわけではありません。
褥瘡発生のメカニズム
褥瘡を予防するには、どのくらいの感覚で体位変換を行うと良いのか?
と言うエビデンスは、明確には見出されておらず、患者さんの状況に応じて個々に設定することが重要です。
日本褥瘡学会の定義では、
「褥瘡とは、身体に加わった外力は、骨と皮膚表面の間の軟部組織の血流を低下させたり、停止させたりする。
この状況により、組織は不可逆的な阻血性障害に陥るため褥瘡となる」となっています。
このような褥瘡発生のメカニズムや、
さらに褥瘡の発生は単なる阻血に留まらず
@阻血性障害(阻血グルコースの供給が不足し、嫌気性代謝亢進により組織内の乳酸が蓄積し、pHが低下します)や
A再灌流障害(阻血による炎症性サイトカインやフリーラジカルなどの組織障害性物質が蓄積し、
血流が再開することによってこれらの物質が阻血部位より広がり組織障害を悪化させます)、
Bリンパ系機能障害(リンパ灌流のうっ滞により、老廃物や自己解性酸素が蓄積します)、
C細胞・組織の機械的変形(外力の直接作用により、細胞のアポトーシス、細胞外マトリックスの配向性が変化します)と言う
4種の機序が複合的に関与すると考えられていることも考えて、
体位変換を行う時間の設定を行わなければなりません。
特に、再灌流障害は、単なる阻血よりも強い組織障害が生じるもので、
体位変換によって褥瘡が重症化する要因の一つです。
つまり、2時間以内に頻繁に体位変換を行う事も、
再灌流障害による褥瘡悪化を招く危険性があるということです。
体圧分散寝具を使用する
体圧分散寝具の開発が進んでいます。
そして、骨突出部位でも低圧に保持できる高機能のエアマットレスも普及が進んでいます。
褥瘡が発生するリスクが高い患者さんに対しては、体位変化だけではなく、
このような高機能の体圧分散寝具を使用してもらい、一点に加わる圧を低くすることが重要です。
褥瘡を予防するためのケアのポイント
- 2時間ごとに体位変換を行えば褥瘡が予防できるということではありませんし、逆に頻繁に行うと良いかと言うと、そうではありません。
- 画一的に体位変換の間隔を設定するのではなく、患者さんの栄養状態やADLなどから褥瘡発生のリスクを見極めることが重要です。患者さんの皮膚状態を観察し、総合的にアセスメントをした結果から、患者さんそれぞれに応じた体位変換間隔を検討します。
- 体位変換だけでなく、褥瘡発生リスクが高い患者さんに対しては、体圧分散寝具を使用することで褥瘡の予防ができます。
褥瘡発生リスクに関するアセスメント
- 自力で体位変換が可能かどうかを観察し検討する
- 麻痺の程度や安静度、意識状態の低下(麻酔覚醒・薬物)
- 病的骨突出部の状態を観察する
- 仙骨部については、簡易測定器によって測定したり、骨突出測定器によって測定したりします。
- 浮腫があるかどうかを観察する
- 下肢や背中の圧痕の程度を観察します。
- 間接拘縮があるかどうかを確認する
- 間接可動域の有無を確認します。
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