副作用に関する患者さんへの教育
副作用に関する患者さんへの教育は、各プロセスや対処形態に合わせて行っていくことが大切です。
患者さんそれぞれによって病期や治療に対する受け止め方は異なり、
不安の大きさも異なります。
患者さんや、患者さんの家族が治療や副作用についてどのように受け止めているかをアセスメントし、
がん化学療法を行うことによって起こりうる副作用発現時期の予測性を考え、
化学療法前、化学療法実施中、化学療法後のプロセスや形態にあった教育をすることが必要です。
がん化学治療による副作用を予測する
がん化学治療出、患者さんが最も不安に思っていることの一つに
「副作用」があります。
副作用が発現することにより、
「今までと同じような日常生活を送ることができなくなるのではないか?」
と言う不安は常に感じていることです。
実際、副作用によりQOLが低下し、抗がん薬治療が継続できなくなる患者さんもいます。
QOLとは、quality of lifeの略で、患者さん一人ひとりの人生の内容の質、社会的にみた生活の質のkとです。
人間らしい生活、自分らしい生活を送ること、人生に幸福を見出すことができるように
手助けをしていくことが看護の現場でも求められています。
抗がん薬治療を完遂するためには、根拠のある十分な副作用対策を行うことが必須で、
回避できる副作用については回避することが大切ですし、
回避できない副作用については、症状を軽減することができるよう
根拠のある対処法を指導し、実施していくことが必要です。
患者さんへの副作用に関する教育を行う時には、
まず副作用を予測することが大切です。
ですが、すべての薬剤の副作用を把握し、
患者指導を行うのは日常の臨床現場では難しいものがあります。
そこでポイントを抑えた患者指導をします。
- 副作用に関する患者指導のポイント
- 薬剤それぞれの特徴的な副作用に関する知識を得て理解を深める。
- 化学療法前であるのか、化学療法実施中であるのか、化学療法後なのかなど、患者さんが現在どの時期にいるのかを把握し、患者さんそれぞれの不安や思いを検証する。
- それぞれの患者さんの対処形態にあった症状管理やセルフケアができるよう、どの時期にどのような患者教育を行うべきなのかを見極める。
治療・副作用を受け止めプロセス・対処形態にあった教育をする
患者さんによって治療や副作用を受け止めるプロセスは様々です。
不安や苦悩が強く、自分が直面している問題に目を向けられない患者さんもいますし、
医療者にひたすら「身をゆだねよう」としている人もいます。
また、情報をたくさん集めて問題解決に尽力し、自分が置かれている状況に適応使用としている人もいるでしょう。
このように、患者さんの対処形態はまちまちですから、
看護師が、患者さんの気持ちやものの見方、対処形態に注目して
それに合った患者教育をしていくことが重要です。
例えば、不安の強い時期や気持ちが混乱している時などに副作用の状況を提供する患者教育を行っても
情報を受け止めることができず、情報を把握することができませんし、理解することができません。
それだけでなく、さらに不安な気持ちをただ煽るだけの結果になる事も考えられます。
このような場合には、多くの情報を提供することは避け、
患者さんがどのくらいの情報を欲しているかを確認しながら段階的な情報提供が必要です。
がん化学療法の治療は、数ヶ月〜長期に及びます。
副作用による苦痛によって、肉体的、そして精神的にもダメージを受け、
適応障害や抑うつを発症する事もあります。
治療や副作用に対する不安は、化学療法導入前に最も強いことが考えられ、
実際にも導入前に不安を感じている患者さんが多いのですが、
化学治療実施中も初めて体験する脱毛など、ボディイメージを変容させてしまう副作用や、
不快感を伴う副作用によって、不安がさらに増強する事もあります。
ですから、どの時期に患者教育を行うべきかのみを考えるのではなく、
化学療法開始前から化学療法終了後に至るまで、
患者さんの不安な気持ちや、心理状態の変化、身体的な苦痛を観察し、検証しながら
患者さんそれぞれにあった教育が必要です。
さらに、がん化学療法に対する薬剤に対する不安は、副作用だけではありません。
多剤併用すれば、相乗効果や感染症を併発するリスクに対する注意を払う事も必要ですし、
緊急時の連絡方法や相談などにも応じることが出来るように指導をすることも必要です。
有効性と有害性のバランスを考慮して説明する
がん化学療法は、新薬として分子標的治療薬などが登場するなど、治療は多岐にわたって進歩しています。
ですが、副作用も多様化している現状があり、セツキシマプなどで見られる皮膚障害などがその例です。
日常の臨床現場では、対処療法として患者さんに
悪心・嘔吐に対する制吐薬の使用や皮膚障害が起きた場合の
ステロイド外用薬の治療による整備されたアルゴリズムが情報提供されています。
ですが、支持療法として使用する薬剤には、その効果が認められますが、
同時にその薬剤そのものの副作用が発症する可能性がある事も患者さんに情報提供することが必要です。
例えば、制吐薬である5-HT3受容体拮抗薬には、副作用として『便秘』があるなど、
有効性と有害性とのバランスを考えて説明することも大切です。
副作用の発現時期と症状
- 急性(投与直後・投与中、投与後数日・数週間、数日または週単位で発現する)
- 血管外漏出、血管痛、アナフィラキシー症状、食欲不振、悪心・嘔吐、
骨髄抑制(白血球減少、好中球減少、血小板減少)、下痢、便秘、倦怠感、
口内炎、脱毛、筋肉痛、関節痛、皮膚障害(挫傷様皮疹、皮膚乾燥、亀裂、爪囲炎)、
手足症候群、腎障害(シスプラチン投与時) - 遅延性(月・年単位で発現する)
- 末梢神経障害(オキサリプラチン投与時)、末梢神経障害(パクリタキセル投与時)、
間質性肺炎、心毒性、眼障害、腎機能障害、肝機能障害、高血圧(ペパシズマプ投与時)
副作用に関する患者さんへの教育関連ページ
- 血管確保に最適な部位
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け血管確保に最適な部位についてご紹介します。
- 血管の探し方
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け血管の探し方についてご紹介します。
- 真空管採血について
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け真空管採血についてご紹介します。
- 食事や点滴と検査値への影響
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け食事や点滴と検査値への影響についてご紹介します。
- 輸血
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け輸血についてご紹介します。
- 輸液管理(IVH)
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け輸液管理(IVH)についてご紹介します。
- 中心静脈カテーテル挿入中の清潔
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け中心静脈カテーテル挿入中の清潔についてご紹介します。
- 輸液フィルタは必要か不要か
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け輸液フィルタは必要か不要かについてご紹介します。
- フラッシュはヘパリンロックと生理食塩液のどちらが良い?
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向けフラッシュはヘパリンロックと生理食塩液のどちらが良い?についてご紹介します。
- 末梢静脈カテーテルの交換について
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け末梢静脈カテーテルの交換についてについてご紹介します。
- 点滴ルートのエアについて
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け点滴ルートのエアについてについてご紹介します。
- 滴下が漏れる理由
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け滴下が漏れる理由についてご紹介します。
- 経腸栄養〜経腸栄養はどのような体位で行うと良いか〜
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け経腸栄養〜経腸栄養はどのような体位で行うと良いか〜についてご紹介します。
- 経鼻胃管カテーテルやバッグの交換のタイミング
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け経鼻胃管カテーテルやバッグの交換のタイミングについてご紹介します。
- 血圧測定〜脈拍が触れず血圧が測れないとき〜
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け血圧測定〜脈拍が触れず血圧が測れないとき〜についてご紹介します。
- 自動血圧計では血圧が高く表示されることがある
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け自動血圧計では血圧が高く表示されることがあるについてご紹介します。
- 胸腔ドレーン管理〜陰圧をかける理由とは〜
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け胸腔ドレーン管理〜陰圧をかける理由とは〜ついてご紹介します。
- 胸腔ドレーンを抜く時期
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け胸腔ドレーンを抜く時期についてご紹介します。
- ドレーンの位置の確認
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向けドレーンの位置の確認についてご紹介します。
- ドレーンからの排液の異常と正常の見分け方
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向けドレーンからの排液の異常と正常の見分け方についてご紹介します。
- 吸引、排痰〜吸引カテーテルの交換タイミング〜
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け吸引、排痰〜吸引カテーテルの交換タイミング〜についてご紹介します。
- 吸引を行う間隔
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け吸引を行う間隔についてご紹介します。
- 気管挿管中の吸引
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け気管挿管中の吸引についてご紹介します。
- 患者さんへの負担を最小限に吸引を行う方法
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け患者さんへの負担を最小限に吸引を行う方法についてご紹介します。
- 浣腸・摘便について
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け浣腸・摘便についてについてご紹介します。
- 膀胱留置カテーテル
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け膀胱留置カテーテルについてご紹介します。
- 膀胱留置カテーテルによる感染が多い理由
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け膀胱留置カテーテルによる感染が多い理由についてご紹介します。
- 膀胱留置カテーテルの尿漏れ
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け膀胱留置カテーテルの尿漏れについてご紹介します。
- 膀胱留置カテーテルの留置時や固定時の注意点
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け膀胱留置カテーテルの留置時や固定時の注意点についてご紹介します。
- 膀胱洗浄の行い方
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け膀胱洗浄の行い方についてご紹介します。
- 創傷の治癒経過と消毒の必要性
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け創傷の治癒経過と消毒の必要性についてご紹介します。
- 手術後のシャワーや入浴について
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け手術後のシャワーや入浴についてについてご紹介します。
- 術後の少量の出血
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け術後の少量の出血についてご紹介します。
- 水泡が形成されている場合の創傷ケア
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け水泡が形成されている場合の創傷ケアについてご紹介します。
- 褥瘡ケア〜体圧分散寝具について〜
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け褥瘡ケア〜体圧分散寝具について〜についてご紹介します。
- 体圧分散寝具の素材と特徴
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け体圧分散寝具の素材と特徴についてご紹介します。
- 褥瘡周囲の皮膚のケア
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け褥瘡周囲の皮膚のケアについてご紹介します。
- 体位変換は2時間ごとに行うと褥瘡を予防できるか
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け体位変換は2時間ごとに行うと褥瘡を予防できるかについてご紹介します。
- 褥瘡がなくならない理由
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け褥瘡がなくならない理由についてご紹介します。
- がん化学療法を始める時の患者さんへの説明
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向けがん化学療法を始める時の患者さんへの説明についてご紹介します。
- 抗がん薬の曝露から身を守るには
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け抗がん薬の曝露から身を守るにはについてご紹介します。
- オピオイドの選択方法
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向けオピオイドの選択方法についてご紹介します。
- オピオイドの使用と眠気に対するケア
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向けオピオイドの使用と眠気に対するケアについてご紹介します。
- オピオイドを使用しても体動時に痛みが強い場合
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向けオピオイドを使用しても体動時に痛みが強い場合についてご紹介します。
- 持続皮下注射での疼痛管理
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け持続皮下注射での疼痛管理についてご紹介します。
- 「死」を口にする患者さんへのケア
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け「死」を口にする患者さんへのケアについてご紹介します。
- 苦痛緩和ができない終末期の患者さんに対して行われるセデーション
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け苦痛緩和ができない終末期の患者さんに対して行われるセデーションについてご紹介します。
- 誤嚥の危険がある患者さんに対してすること
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け誤嚥の危険がある患者さんに対してすることについてご紹介します。
- 食事中にむせたら
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け食事中にむせたらについてご紹介します。
- 安全で嚥下しやすい姿勢
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け安全で嚥下しやすい姿勢についてご紹介します。
- とろみをつけるときの注意点
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向けとろみをつけるときの注意点についてご紹介します。
- 摂食・嚥下障害のある患者さんが生じやすい口腔問題とは
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け摂食・嚥下障害のある患者さんが生じやすい口腔問題についてご紹介します。
- 口腔内の汚染がひどいとき
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け口腔内の汚染がひどいときについてご紹介します。
- 口腔内に口内炎や潰瘍、出血などがある患者さんへの口腔ケア
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け口腔内に口内炎や潰瘍、出血などがある患者さんへの口腔ケアについてご紹介します。
- 適切な人工唾液や保湿剤の使い方
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け適切な人工唾液や保湿剤の使い方習についてご紹介します。
- 使用後の機器や器具類の感染予防策
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け使用後の機器や器具類の感染予防策についてご紹介します。
- 下痢や嘔吐がみられる患者さんへの感染予防策
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け下痢や嘔吐がみられる患者さんへの感染予防策についてご紹介します。
- 小児面会者の感染対策上の対応
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け小児面会者の感染対策上の対応についてご紹介します。
- ディスポーザブル製品の取扱い
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向けディスポーザブル製品の取扱いについてご紹介します。
- 効果的な手洗い方法
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け効果的な手洗い方法についてご紹介します。
- 手袋を外した後も手洗いが必要
- 復職セミナーを受けようと思っている看護師さん向け手袋を外した後も手洗いが必要についてご紹介します。